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autolink IM/S14-099 カード名:蒼い鳥 カテゴリ:クライマックス 色:青 トリガー:2 【自】このカードが手札からクライマックス置場に置かれた時、あなたは1枚引き、自分のキャラを1枚選び、そのターン中、パワーを+2000し、ソウルを+1。 私は飛ぶ 未来を信じて レアリティ:CC illust.杏仁豆腐 11/08/25 今日のカード。 ・関連カード カード名 レベル/コスト スペック 色 今日もレッスン 千早 2/1 8000/1/1 青
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泣くことならたやすいけれど 悲しみには流されない 恋したこと この別れさえ 選んだのは 自分だから □ 気づくと私は、床に倒れていた。 起き上がり周囲を見回すと、そこが通い慣れた八十神高校の教室だと分かった。 「え、ここって……」 黒板や机の配置を見て、二年二組の教室だと気づく。外が暗く、人がいないこと以外は、いつもの教室と同じだ。 私はなんとなく、自分の席に着いた。 もしかして、さっきの光景は全て夢なのか。そんな想像が頭をよぎる。 ほっとしたのも束の間、喉のあたりに違和感を覚えて、手を触れた瞬間、現実に引き戻された。 「これ、首輪……」 呟くのと同時に、脳内についさっきの光景が浮かんだ。 マナと名乗る金髪の少女が、笑いながら話す姿。そして、完二くんの首輪が爆発して、勢いよく血が噴き出している姿。 思い浮かんだ光景を振り払うように、私はぎゅっと目をつぶる。 それなのに、脳内からその光景は消えない。 「じゃあ、完二くんは本当に」 声が震えた。その先は口に出せそうにない。 頭では理解していても、それを認めたくない。 私は考えを断ち切るために、別のことを考えようとした。 「……千枝はどうしてるかな」 さっきの場所には、千枝もいた。 親友がいつも着ている緑ジャージを見間違えるはずがない。 正義感の強い千枝は、殺し合いを強制するマナに対して、怒り心頭だろう。 顔に靴跡をつけてやる、と息巻く姿が、容易に想像できた。 「もしかして、他のみんなもいるのかな……」 完二くんに千枝、それと私。 この殺し合いには“自称特別捜査隊”の仲間が、三人も巻き込まれている。 想像したくはないけど、他の仲間もここにいるかもしれない。 花村くん、クマさん、りせちゃん、直斗くん。そして、リーダーの鳴上くん。 みんな信頼できる仲間たちだ。殺し合いの場にいて欲しい、とは言えないが、もし会えたなら心強い。 花村くんや直斗くんなら、もう脱出する方法を考えついているかもしれない。 「……でも」 ぽつりと声が漏れていた。 無意識のうちに出てきた、私の心の声。 私の頭に浮かんできたのは、鳴上くんの姿。 頼れるリーダーであり――私にとって初めての特別な人だ。 「鳴上くんには、いて欲しいな……」 私は自分で自分の肩を抱いた。 こうすると、鳴上くんに優しく抱きしめられたときの感触を思い出す。 この先ずっと、忘れることはないだろう記憶。 「って、私ったら何を……!」 仲間が死んでいるのに、あまりにも不謹慎だ。 少しだけ熱いほほを手で扇いで、私は窓から空の月を見上げた。 そのとき、私はあることに気が付いた。 どこかから、声が聞こえてくる。 いや、これは単なる声というより、歌声だろうか。 耳を澄ますと、歌声は上の方から聞こえてくるように感じられた。 (行ってみよう、かな) 私は教室を出て、歌声のする方へと歩き出した。 □ 群れを離れた鳥のように 明日の行き先など知らない だけど傷ついて 血を流したって いつも心のまま ただ羽ばたくよ □ (やっぱり、屋上から聞こえるみたい) 屋上に向かう階段に着くと、女性の歌声がはっきりと聞こえてきた。 とても澄んだ声だ。曲はゆっくりとしたバラードで、歌詞も聞き取りやすい。 (上手……悲しい曲なのかな) 歌手に精通しているわけではない私でも、この歌は上手いと感じた。 けれど同時に、悲痛な感情が含まれている気がした。 (どんな人なんだろう) 屋上のドアをそっと開ける。 外は暗いものの、何度も来ている場所なので、恐怖心はない。 ぐるりと見渡すと、少し離れたフェンスの前に、人影が見えた。 少しずつ近づく内に、女性は私と同じ長髪だと分かった。 「……っ、誰!?」 私に気づいたのか、女性は歌を中断して叫んだ。 その声に私はビクッとしたが、ここで怯えていても仕方がないので問いかける。 「あの……あなたも、参加者ですよね?」 「……はい」 「あっ、名前……私、天城雪子です」 「……如月千早です」 私が名前を言うと、若干の間はあったけど、相手も名前を返してくれた。 立ち話もなんだし座ろうか、と促すと、これにも応じてくれた。 そして、よく鳴上くんとご飯を食べるときの場所に、二人で並んで腰掛けた。 「えっと、高校生?」 「はい」 「そっか、私も高校生なの。偶然だね」 「そうですね」 「……」 「……」 「千早ちゃんって呼んでもいいかな?」 「お好きにどうぞ」 「そ、そっか……」 「……」 会話が途切れてしまう。 私は千枝や花村くんのように、初対面からどんどん話に行けるタイプではない。 かといって鳴上くんのように、話をさせる雰囲気作りが上手いタイプでもない。 それは相手も同じようで、どうにも会話が弾まない。 沈黙を断ち切るために、私はいちばん気になっていたことを尋ねた。 「ねえ、どうして歌っていたの?」 「……」 「あ、もし言いたくないなら……」 これまでよりも気まずい沈黙。 これは言葉選びを間違えたかもしれない、と焦りながらフォローを入れる。 すると、断定的な口調での返答が来た。 「私には、歌しかないんです」 「え?」 私は千早ちゃんの横顔を見た。その横顔から感情は見いだせない。 ただ、もともと落ち着いている声のトーンが、より暗く低くなったように感じた。 「人は死んだら、歌えなくなりますよね」 「それは……」 私は何か言おうとしたけど、思いつかなくて口をつぐんだ。 死んだら歌えなくなる。それは、当然と言えば当然のことだ。 急にそんなことを言い出すなんて、ネガティブになっているのだろうか。 あるいは殺し合いというマイナスのイメージの言葉が、そうさせたのかもしれない。 「歌えない私に、意味なんてない」 暗い声でありながら、千早ちゃんの言葉には強い意志が感じられた。 「まだ死ぬって決まったわけじゃ……」 「じゃあ!」 叫ぶと同時に、千早ちゃんはいきなり立ち上がって私を見た。 その表情は先程までとは異なり、焦燥がありありと浮かんでいる。 「殺せって言うんですか!?歌うために、他人を殺すの!?」 「……」 「そんなこと、できるわけがない……」 殺すという強い言葉。それが同年代の口から出たことにも驚いた。 それでも、それ以上に、千早ちゃんの苦しそうな表情が、印象的だった。 呼吸を整えた千早ちゃんは、再び腰を下ろした。 「……だから、私は歌い続けます。 歌い続けることで、如月千早という自分が、ここにいたという証拠を残したい」 「千早ちゃん……」 私は何も言うことができず、下を向いた。 声をかけたときは、人が来て危ないかもしれないから歌うのは止めた方がいい、と言うつもりだった。 けれど、歌うことに対する千早ちゃんの熱意、あるいは執念とも呼べるそれは、あまりにも強い。 まさに命を懸けてでも、歌いたいのだろう。 (……でも、なんでそこまでして歌うのかな?) 少し考えたけど、その気持ちは分からない。 きっと、千早ちゃんの心の深いところに、その原因があるのだろう。 そんなことを思っていると、ふと、ついさっき耳にした歌の歌詞を思い出した。 □ 蒼い鳥 もし幸せ 近くにあっても あの空へ 私は飛ぶ 未来を信じて □ 蒼い鳥が、未来を信じて独りで飛んでいく歌。 この歌は千早ちゃんにとって、どれくらい大事な歌なのだろうか。 今の私には、想像することしかできない。 「……話はもういいですよね?私はここから動くつもりはありません」 そう言うと、千早ちゃんは私に顔をそむけた。 その動きからは、若干の後ろめたさが感じ取れた。 私はそんな姿を見て、意思を固めた。 「わかった。じゃあ、私もここにいる」 「え?」 キョトンとした顔を私に見せる千早ちゃん。 私は微笑んで、はっきりと自分の意思を伝えた。 「ここで千早ちゃんの歌を聴くね」 「ど、どうしてですか?何の理由が……」 困惑した様子を見せる千早ちゃん。 もちろん、捜査隊の仲間がここ、八十神高校に来てくれるかもしれない、という打算的な考えもあるにはある。 けれど、それ以上に私は千早ちゃんのことを気にしていた。 「私と千早ちゃん、どこか似ている気がするの。 なんていうか……他人事だと思えないっていうのかな」 他人事だとは思えない。これは私の本心だ。 歌に執着して――囚われて――いる千早ちゃんの姿が、かつて見た私のシャドウと重なるのだ。 どうにかしてあげよう、何かできるはずだ、などとは思っていない。 ただ、なんとなく近くにいてあげたいという気持ちが湧いた。 「それに、千早ちゃんの歌、聴きたい。 ここにいる理由、それじゃダメかな?」 「……まあ、なんでも、いいですけれど」 千早ちゃんの返事は、今までよりも少しだけ上ずって聞こえた。 【E-5/八十神高校・屋上/一日目 深夜】 【天城雪子@ペルソナ4】 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:基本支給品、ランダム支給品(未確認) [思考・状況] 基本行動方針: 1.千早ちゃんの歌を聞く。 2.八十神高校にいれば千枝が来るかもしれない。 ※(少なくとも)本編で直斗加入以降からの参戦です。 ※鳴上悠と特別な関係(恋人)です。 【如月千早@THE IDOLM@STER】 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:基本支給品、ランダム支給品(未確認) [思考・状況] 基本行動方針:歌う。 1.この場所で歌い続ける。私にはそうするしかない。 Back← 016 →Next 014 Abide 時系列順 017 For a future just for the two of us. 015 後戻りはもう出来ない 投下順 NEW GAME 天城雪子 041 奪う者たち、そして守る者たち(前編) NEW GAME 如月千早
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蒼い鳥 ◆0RbUzIT0To (非登録タグ) パロロワ ニコニコ動画バトルロワイアル 第七十一話⇔第七十二話 第七十二話⇔第七十三話 互いに違う目的を持ちながらも共に歩む二人が放送を聞いたのは、 暗闇の中でおぼろげに見えていた城の入り口に到着した瞬間だった。 放送中はお互い何も言わずに黙って聞いていたのだが、 死者発表のくだりに入った時、日吉の眉が僅かに動いた。 「誰か知り合いが呼ばれたようだな」 「…………」 知り合い……確かに呼ばれた。 だが、別に仲間だった訳でもない。 一戦、戦いを交わした事がある相手。ただそれだけ。 知り合いが死んで悲しみは感じているが、そこまで深い悲しみという訳でもない。 日吉が放送を聞いて反応を示したのは越前リョーマの死による為のものではなく、呼ばれた人数の事に対してだ。 例の放送が正しいものだとするならば、このゲームが開始されて6時間という僅かな間に10名もの死者が出たという事になる。 10名――日吉が破壊したドラえもんの分を抜いたとしてもかなりの数だ。 地図を見てみればわかる通りに、このフィールドはとてつもなく広い。 70人が各地バラバラに配置された以上、一箇所に9名もの人間がいてたった1人の強者に全員殺されたという可能性は限りなく薄い。 恐らく、各地別の場所で殺し合いに乗り気になった奴に殺されてしまったのだろう。 つまりは、かなりの人数の殺し合いに乗ってしまった奴がいると考えてまず間違いない。 日吉の隣を歩く男のように、殺し合いに乗ってしまった奴が……。 日吉が問題視しているのは下克上をするのに役に立つ人物がその殺し合いに乗った者に殺されないかという事である。 勿論人が死ぬ事は悲しいし止めたいが、今はそれよりも主催者達への下克上が優先だ。 日吉は所詮ただの中学生。 力には自信があるものの、それだけ。 一人だけではどうしようもないのは認めるしかない事実。 ならば、誰か下克上をする手段を考えられる協力者を募らなければならない。 「行くぞ、日吉」 「おう」 削除番長が城の扉に手をかけながら問い、それに答える。 城を目指した理由は、特にはない。 目的地も何も無かった時に目に入った為、自然と足が向いただけだ。 しかし、よくよく考えると拙い気もする。 削除番長は未だに全参加者の削除を行動理念としている。 説得をどれだけしても無駄なのだろうという事は瞳を見れば十分わかった。 この男、削除番長はどのような障害があろうと削除をする事を心に決めてしまっているのだ。 どれだけ言葉を紡ごうと、拳を交えようと番長の意思を変える事は最早出来ない。 それが、この男が存在する意義なのだというのだから。 だが、日吉はそれを黙って見ているつもりは無い。 番長が参加者を削除をしようとした瞬間、日吉は削除番長を駆除する。 ただそれだけの誓いを胸に秘め、日吉と番長の二人は城の内部へと足を踏み入れた。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 城の内部では、けいことやよいが二人で朝食を取っていた。 KASがくれたししとうに加え、 元々城に常備されていた食料があった為にこの殺戮ゲームの食事にしてはかなり豪勢なものが出来た。 調理中、けいこの指示通りに皿を持ってきたり、野菜を洗ったりといった簡単なものだけだがやよいはよく働いた。 けいこもその様子を微笑ましく思いながらその腕を振るった。 その姿は本当に実の親子のように仲睦まじかった……が。 「どうしたんなぁ、やよいちゃん?」 食事の途中から、突然やよいの様子がおかしくなった。 何かを我慢しているような、苦しそうな表情。 けいこは最初、ししとうの辛味があるものに当たってしまったのだろうかと思ったがそれも違うらしい。 しばらく思案した後、けいこはその原因に思い当たる。 「知ってる人、呼ばれたんかなぁ?」 「……はい」 やはり、と思うと同時に不憫な子だとけいこは思う。 先ほどまでは明るく話をしてくれていたのに、今ではすっかり沈んでしまっている。 苦しそうな表情も、よくよく見れば悲しみに耐えている表情だ。 そのつぶらな瞳からは今にも涙が零れ落ちそうで、見ていて耐え難い。 けいこは、静かに席を立つとやよいの隣に座る。 そして、その皺でいっぱいになった手でやよいの手を掴み、優しく握った。 「泣きたいんやったら、泣いてええ。 やよいちゃんには、私がついてる……私がついとるさかいな」 「けいこさん……」 やよいはけいこの胸の中に顔を埋め、泣いた。 けいこは複雑な表情をしながら、それを受け入れる。 けいこの心中にあった思いは二つ。 それはやよいの知り合い……大切な人の命を奪った者への怒りと、果たして本当に自分はやよいを守れるのだろうかという不安。 決して力がある方ではない。 毎朝新聞配達をしているお陰で同世代の他の人に比べれば体力はあるかもしれないが、 それでも若い男の人には負けるだろう。 ようやく泣き止んだやよいの頭を撫ぜながらけいこは自分のデイパックを手に取った。 人殺しなどするつもりが無かった為に中身を確認していなかったが、こうなっては仕方が無い。 拳銃などは上手く扱える自信はないが、 やよいやKASの道具を見る限り凶器以外のものも入っているらしい。 何か身を守れるような道具でもあれば、きっと役に立つだろう。 そう思い、中身を見てみると……。 「なんでしょうか、これ?」 出てきたのは三枚の札と、ピンクの鳥が描かれた置物のようなもの。 何れも凶器ではないが、付属の説明書によると非常に便利なものらしい。 一応、二人共熟読をして使い方を覚えておく。 「うーん……なんやようわからんなぁ」 「こっちのカードは多分、子供が遊ぶゲームに使うものだと思います。 弟も、なんだか似たようなものやってたと思いますし」 他に何か入っていないだろうかと思い中を探っていると、一枚の紙が出てきた。 「これは……ああ、名簿やね」 人の名前らしきものが羅列された紙。 あの放送で言っていた名簿だろう。 とりあえず手に取ったのだし、とそこに書かれている文字を上から順に読んでいくやよいとけいこ。 そして、その視線がある所に止まると……。 「こーじ!?」 「春香さん!?」 同時に大声をあげ、驚きを露にする。 「けいこさん! ここここ、これ……私の知ってる人ですぅ!」 言いながら、震える指で名簿の上に指を滑らせる。 天海春香、菊地真、双海亜美……そして、亡くなってしまった如月千早。 「私もやがぁ、やよいちゃん」 同じように、指で名簿を指す。 永井浩二、永井博之の場所で止まったその指は震えてこそいなかったものの、汗で湿っていた。 「……千早さん以外の人もいたなんて」 「そうやねぇ……なんで私らの知り合いまで呼ばれとるんやろ」 「……あれ?」 ふと、気づいた。 けいこさんの名前は、永井けいこ。 さっき指差した名簿の名前は、永井浩二と永井博之。 「もしかして、このお二人って……!?」 「うん、そや……私の子供や」 子供……。 うん、確かにここで色々お話をしていた時に子供のお話も沢山出てきた。 けいこさんは二人の事を悪く言っていたけれど、本当はとてもいい人だと思う。 だって、けいこさんの子供なんだし。 「……まあ、人殺しなんて事はせんとは思うんやけどなぁ」 やっぱり、けいこさんも子供さんの事が心配みたい。 「……それじゃ、とりあえずご飯の後片付けしたら二人でお城の外でよか。 やよいちゃんのお友達も探さなあかんでなぁ」 「はい、そうですね!」 春香さん達がいるんだ。 千早さんは残念だったけれど、せめて他の人たちだけでも見つけないと。 そう思って立ち上がり、けいこさんのお手伝いをしようとした瞬間だった。 台所から、黒い人影が出てきたのは。 「削除する……!」 黒い人影――削除番長は二人に襲い掛かっていった。 その手には包丁が握られている。 恐らく、台所で入手したのだろう。 突然現れた不審者にやよいは怯えていたが包丁が二人に突き刺さろうかという直前、 けいこが咄嗟に地面に押し倒して削除番長の攻撃からやよいを守る。 その衝撃でやよいは手に持っていたカード三枚を地面へと落としてしまい、 顎を床にしたたかに打ち付ける。痛い。 「削除する!」 痛がっている暇は無い。 再び包丁を振り上げ、削除番長は床に倒れた二人を狙っている。 床に倒れている為に回避は不能。 そして、その包丁が振り下ろされた瞬間だった。 「させるかァッ!!」 再び突然現れた男――日吉若が、 削除番長目掛けて思い切りドロップキックを決め込んだ。 反応も防御も出来なかった削除番長は派手な音を立てて吹き飛び、壁へと激突する。 「早く逃げやがれ!」 城内に入ってしばらく、気づけば隣にいた番長がいなかった事に気づいたのがついさっき。 番長はこの城内に人がいる事に気づき、隙を見て日吉の前から姿を消したのだろう。 倒れている二人のものと思われる大声を聞いた瞬間、ここまで駆けつけどうにか間に合ったものの状況は芳しくない。 あれだけ削除をさせないと誓っておきながら、むざむざ逃がしてしまうなど……情けない。 先ほどの蹴りで吹き飛ばしはしたが、あの程度では大したダメージにはなってないだろう。 番長もそうだが、日吉自身も先の殴り合いのせいで疲労が溜まっている。 肉体にのみ頼った攻撃手段では、到底致命傷にすらならない。 「やよいちゃん、はよぉ立たんと……!」 「う……うぅっう……」 背後で二人が何かをやっている音が聞こえる。 どうやら、立とうとしているようだが少女の方は腰が抜けて動けないらしい。 「ちっ……!」 振り返って少女に向けて再び立つよう促そうとした瞬間、 日吉は背後――つまり、番長のいる方向――からの気配を感じた。 「おおおおおおおおおおおっ!!」 日吉は、確かに背後からの気配を感じ取っていた。 いや、鬼気迫るほどのその殺意は感じ取れない者などいないだろう。 咄嗟に、日吉は振り向きざまにひらりマントを翳して避けようとするものの、 それよりも早く削除番長の体当たりを食らい倒れこむ。 「ぐっ……!?」 「俺の削除は誰にも止められん……! 日吉、例えお前が相手だとしても、だ!」 日吉は、番長を侮っていた。 日吉が日吉流最終奥義・ボブ術を隠していたのだとしたら、 番長は誰にも揺るがせない決意とあらゆるものを削除してきた経験とを持っているのだ。 どんなものであろうと、削除した事に文句を言われようと、問答無用で行ってきた削除に対する決意。 それは、何者にも簡単に止められない。 「まだまだ……10ゲームはいける!」 「ぬーん……俺はあと、20削除はいける!」 「減らず口を!!」 立ち上がり、即座に伸ばした拳は番長には届かず受け止められ、 わき腹を蹴られて日吉は再び昏倒する。 「今のうちに……削除だ!」 必死に少女を守ろうと、果敢にも羽交い絞めにしようとしてきた熟年の女を軽くあしらい、 その包丁を少女目掛けて思い切り振り下ろす。 しかし、少女は怯えながらも手を伸ばしていた。 倒れていた場所のすぐ傍に落ちていた、裏になってしまっていたカード。 それを手にし……表にして叫ぶ! 「リバースカードオープン! トラップカード発動! マジックシリンダー!」 その瞬間カードが強烈な光を放ち、二つの筒が虚空より現れる。 筒は番長の包丁を持つ腕に一つが張り付き、そしてもう一つが番長の腹部付近に移動した。 「何!?」 本能的に、何かの危険を感じ取った。 しかし、番長はもはやその腕を止められない。 包丁を持ち、筒が貼り付けられたその腕は少女に向かって進み。 そして。 番長の腹部に、刺さった。 「な……」 喉元に、熱いものが込み上げてくる。 手に纏わりつくねばついたものは……血だ。 誰のものでもない、自分の――削除番長の。 「う……ううう……うぅ」 少女は、血を見て恐怖をしているのか言葉にならない言葉を吐きながら後ずさりする。 熟年の女は痛むのだろうその腰に手をあてながらも、少女に寄り添っている。 二人共、削除が出来なかった……。 削除こそが本義、削除こそが生き甲斐、削除こそが己のやるべき事。 だというのに、たったの一人も削除が出来なかった。 何故……。 「……もう終わりだ、番長」 起き上がった日吉が番長に言葉をかける。 マジック・シリンダー。 相手の攻撃を無効化し、その攻撃力の分のダメージを相手プレイヤーに与える罠カード。 番長の混信の力を込めたその攻撃はもはや助からない傷。 当然だ。殺す気で刺そうとしていたものを、自分で受けたのだから。 「じゃあな……」 日吉のその言葉と同時に番長は倒れこむ。 丁度つい先ほど、少女が倒れていた場所に大きな音を立てて。 そうして、何かをぶつぶつと呟いた後、番長は動かなくなった。 「……ちっ」 物言わなくなった番長を一瞥し、日吉は二人の女を見た。 最後まで少女を必死に守ろうとした熟年の女と、怯えながらも機転を使って死を回避した少女。 健闘は褒めてやってもいいが、下克上の役には立ちそうもない。 「あんた誰なんなぁ……! こん人の、知り合いみたいやけど?」 少女を抱きしめながら、怒気を含んだ口調で問いかけてくる。 確かに怒るのは無理も無いだろう。 しかし、どう返答したらいいものか困る。 そもそも自分自身がどういう関係といっていいのかわからないのだから。 「別に……ただ、一緒に連れ立っていただけさ」 適当に茶を濁した返答をする。 女は気に食わなかったようだが、少女に宥められて落ち着いたようだ。 「あの……助けてくれて、ありがとうございました」 「俺の責任だからな、感謝される謂れはねぇ」 そう言いながら、少女の顔を見る。……まだ、若干恐怖に染まった表情。 いや……これは、むしろ自分に対しての責を感じている顔か。恐らく、あのカードを使って番長を返り討ちにした件だろう。 番長が悪い奴であれどうであれ、そのカードを使って番長を殺したのは自分、だとか考えているに違いない。 あのロボットを倒した時の俺とは、反応が雲泥の差だ。……さて、それにしてもどうしたものか。 城にはこの二人以外には参加者がいないようだし、そろそろ他の場所に移らなければならない。 少女の方にはあれが少女の責任ではない、悪いのは番長だから仕方が無かったと説明をしたい所だが、正直に言って時間が惜しい。 熟年の女も支えとしている事だし、そろそろ行かせてもらおう。 そう思い、立ち上がり二人に一礼をして足を進める。 「リバースカードオープン! トラップカード発動! 六芒星の呪縛!」 何者かの声がし。 突然、日吉の体を中心として地面に六芒星が描かれる。 「何だ……!?」 咄嗟に抜け出そうとするものの、抜け出せない。 何かが体を纏わりついているような……そんな、不思議な感触。 決して逃れる事は出来ない呪縛が日吉を襲う。 「……削除」 「!?」 それは、先ほど死んだはずの男の声。 本来ならありえないはずの現象が……何故か、目の前で起こっている。 「番長……!?」 削除番長が、そこに立っていた。 腹部からは血を流し、包丁にも血糊がべっとりとついている。 ……何故だ? 「何故……お前が、生きている?」 「……こいつを見ろ」 そう言って、番長は震える手で学ランの袖を捲くる。 その腕に巻かれてあったのは……鉢巻? 「気合の、ハチマキ、というらしい。 例え致命傷を、受けても瀕死の前段階で、ギリギリ、耐えられる事が出来る、という代物だ」 日吉は、思わず歯を鳴らした。 そういえば、この番長は武器を何一つ持っていなかった。 役に立つものが無かったのだろうと思っていたが……まさか、こんなものを支給されていたとは。 「そして、お前を縛る、その、六芒星は、こいつらが落と、していたもの。 うまく、お前らに、気づか、れずに手に出来て、よかった……」 使用方法は、恐らく先ほど少女が使った時の見よう見まねで会得したのだろう。 息も絶え絶え、番長は包丁を持ち、歩く。 最早執念としか言い様が無い……。 例え瀕死の前段階で耐えられるといっても、所詮はそれだけ。 ほんの一度殴りでもすればすぐに息絶えてしまいそうな姿だというのに、 番長はその眼光の鋭さを更に増して少女に近づいていた。 少女はといえば、突然蘇った番長に対して恐怖しているようで動く事さえ出来ない。 これまでか……そう思われた時、少女を庇うようにして番長に向かっていく影があった。 「させへんでなぁっ!」 「ぬんっ!」 あと一撃でも食らわせれば倒す事が出来るのは誰の目から見ても明らか。 それを感じ取ったけいこは、果敢にも番長に丸腰で立ち向かっていった。 だが……やはり、その拳は番長には届かない。 番長はけいこの突進を、一突きの包丁で止めてみせる。 「ッ……!」 「けいこさんっ!」 少女が叫ぶが、けいこはそれに答えず蹲る。 腹から、血が流れているのが見えた。 「次は……貴様だ」 「番長……ちっ、逃げろ!! 早く!」 日吉の叫びに、少女は答えない。答える余裕がない。 立ち上がり、こちらに向かってくる番長のその背後で倒れるけいこの元へと駆け寄ろうとする。 自分がただ襲われた時は、恐怖で体が動かなかった。 しかし、自分の大切な人……けいこが自分を庇って倒れた時、自然と体は動いた。 「けいこさんっ!」 「ふん……!」 けいこの元に駆け寄ろうとした少女の体を、番長が捕まえる。 傷だらけとなった番長のどこにそんな力があるのか、 少女の肩に食い込ませた手はそう簡単に剥がれそうにはない。 「うぅっ……痛いぃ……!」 「誰一人として、逃げさん……お前らは、お前らだけでも……俺は……削除する!」 日吉は、呪縛によって動けない。 けいこは、腹部から血を流して倒れ……やよいを見て、何かを呟いている。 やよいは、逃げようと必死に体を捻るが番長は決してやよいを逃がすまいと掴んでいる。 そして、番長の持つ血塗られた包丁が再び振り下ろされた。 「……リバースカード オープン!」 掠れた声が聞こえた瞬間、番長はその包丁を止めて背後を振り向く。 そこには、地面に落ちていた最後のカードを拾い、 血に濡れた手でそれを翳していたけいこの姿があった。 「トラップカード発動……! 攻撃誘導アーマー! 対象は……永井けいこ!」 瞬間、けいこの体を鎧が包み込み、番長の体が後退する。 攻撃誘導アーマー……攻撃宣言をした瞬間に発動。 その効果は、攻撃宣言された対象から、他の対象への入れ替え。 つまり、やよいに攻撃しようとしていた番長の攻撃は……。 「ぬおおおおおっ!!」 番長が、血を吐きながら吠える。 その包丁を振り上げ、思い切り振り下ろす。 鎧で包まれた、血塗れの熟女……永井けいこ目掛け。 背後から、やよいが止めようと必死に番長にしがみ付くが番長は怯まない。 カードが一度発動した以上、番長は止まらないのだ。 包丁は、真っ直ぐにけいこへと振り下ろされる。 鎧にぶつかり、そして、その衝撃で包丁は割れ……。 瞬間……最後の力を振り絞りながらも、戦い抜いた男は再び地面へと倒れ伏す。 削除する事にのみ、その闘志を燃やした削除番長は……。 今度こそ、本当に、動かなくなった。 「けいこさんっ!」 涙を目に浮かべながら、けいこの元へ駆け寄る。 鎧は、効果を果たした為か消え失せる。 腹部からはまだ、血が流れ出ていた。 「……やよいちゃん」 「けいこさんっ……うぅっ、お、お医者さん……!」 「……ええから」 混乱し、何をどうしていいのかわかっていないように目を泳がせるやよいの手を、けいこは静かに握る。 皺と血にまみれた手。 先の、千早が死んだと放送で聞き、 悲しみに浸っていたやよいを優しく包んでくれた時には無かった血が付着している。 しかし、不快感は無い。 「どうして……けいこさんがっ!」 「ゆうたがな……やよいちゃんの事、守るてなぁ。 ……ずっと、私がついとるっていう、約束の方は……守れそうに、あらへんけど」 声が、途切れる、掠れる。 やよいは、その握る力を更に強めた。 守ってもらうばかりで……怯えているばかりで、何も出来なかった自分に対する怒り。 「ごめんなさい、けいこさん……! 私のせいで……!」 「ええんよ……私が好きでやった事やから。」 「自分を責めたらあかんでな、やよいちゃん。 私はもう、だいぶ生きた……子供ももう、大きなったから、後悔は無いわな」 ゆっくりと、言葉を紡ぐ。 その声は、本当に優しく……やよいは、その言葉を静かに聞いてゆく。 「まあ……たっちゃんにしろ、こーじにしろ、ひろくんにしろ、孫の顔も見せてくれんかったのは心残りっちゃ心残りやけれど。 ……やよいちゃんには、まだ、未来があるからなぁ。 私らよりも、もっともっと、生きないかんで……」 「けいこさん……私……」 「ごめんなぁ……最後まで、一緒にはおられんかったわ……」 やよいは、大粒の涙を流しながら首を振る。 もう、言葉が出てこない。 「絶望したら、いかんでな……。 もし、こーじと、ひろくんに会ったら……守ってもらい……。 あの子らは……ちょっと、問題はあるけれど……やよいちゃんの事、きっと、守ってくれるでな……」 息を、吸い込む。 「……元気でなぁ、やよい、ちゃん」 その言葉が放たれると同時に、永井けいこは目を閉じた。 「けいこさん……っ!」 もう、物言わなくなったけいこを見てやよいは再び泣きじゃくる。 けいこは、本当に……静かに逝った。 腹を刺され、苦しかっただろうに、安らかな顔をして眠っている。 言葉が通じなかったKASとの交流を可能にし、怯えていたやよいを安心させたその心。 慈愛とは、こういう事を言うのだろう。 「けいこさん……ごめんなさい……」 既に力を失った手を握り……胸の上へと置く。 その時、背後で何かがカタリと音を立てる。 「……え?」 思わず、振り向くやよい。 そこにあったのは……けいこのデイパックから出てきたのであろう、何かのCD。 先ほどの戦闘による衝撃で表に出てきたのであろうそれが、机に当たって音を立てたのだろう。 ……近づいて、手にとって見る。 「これ……」 そこにあったのは、自分のよく知っている人――如月千早のCDだった。 いや、千早のものだけではない。 春香や真、無論、自分のものも……総勢、10枚のCDがそこには入っていた。 これが……けいこのデイパックに入っていた最後の支給品だろうか。 「千早さん……」 手に取ったCDの裏面を見てみる。 そこには曲目がずらりと並び、レコーディング風景などを思い出させる。 765プロのアイドル総出で出した、アルバム集。 その中でも、自分のものと千早のものの売り上げはダントツだった。 特に、千早の歌は世間でとても評判がよく、ネット上でも『神曲』認定されていたと律子が言っていた。 「蒼い、鳥……」 失恋ソング。 自分にはまだ、愛だとか恋だとかはよくわからなくて、 朝ごはんを題材にした歌を持ち歌として歌っているけれど、 その曲の歌詞の素晴らしさと曲の美しさは、わかる。 「泣くことなら、容易いけれど……」 悲しみには、流されない。 「群れを離れた鳥のように……」 明日の行く先など知らない。 だけど傷ついて、血を流したっていつも心のままただ羽ばたくよ。 「蒼い鳥……もし、幸せ……」 近くにあっても、あの空へ。 「私は飛ぶ……」 未来を信じて。 あなたを、忘れない。 「でも、昨日には帰れない……」 まるで、今の自分のようだと思う。 親鳥を失ってしまった自分は、群れを離れてしまった鳥と同じ……。 でも、この歌では……傷ついても、血を流しても、それでも……羽ばたいている。 ……未来を信じて。 「けいこさん……千早さん……!」 涙を拭く。 そうだ……いつまでも落ち込んでなんて、いられない。 傷ついても、血を流しても……大切な人を失っても、羽ばたかなきゃいけない。 この歌のように、未来を信じて。 「浩二さんと博之さんに会わなきゃ! 春香さん達にも、会わなきゃ!」 けいこの死を、最期を伝える為にも。 他の皆の無事を確認する為にも。 自分のデイパックに、支給品を詰め込んで鳥の描かれた置物に触れる。 やよいの頭にインディアン風の羽の髪飾りが装着され、腕には翼が生える。 ウイングのもと。先のけいこと行った支給品の確認作業の時に出てきたものだ。 これをつけて、腕を動かせば空を飛べるらしい。 準備は万端だ。 さぁ、行こう。 未来を信じて、飛び立たないと……。 「待てよ!」 「うわあっ!?」 そう決意した瞬間、背後から声をかけられて驚く。 振り向くとそこには……まだ呪縛によって動けない、日吉の姿。 っていうか、まだいたんですか。 「おい、どうなってんだよこれ。 いつになれば外れるんだ!?」 「うっうー……え、えーと六芒星の呪縛ですよね……」 デイパックにしまったカードを取り出して効果を確認。 六芒星の呪縛……このカードが存在する限り、指定された者は身動きが取れなくなる。 指定された者が殺害された時、このカードを破壊する。 つまり、日吉を殺害するかカードを破壊しない限りはこの呪縛は解けない。 「じゃあ話は早い、そのカードを破いてくれ」 「だ、駄目ですよそんなの! 勿体無いじゃないですか!」 悲しみを拭ったやよいは、徐々にいつもの調子を取り戻しつつあった。 その証拠に、その勿体無い魂をこんな状況でさえ発揮している。 「多分……罠を無効化するカードとか、そういうのがあれば解けると思います。 もしかしたら時間がある程度たてばいいのかも……」 「あー、まどろっこしいな……!」 「あの……それじゃあ、私探してきます! 何か、それを解除出来る道具とか……」 元々、外に行くつもりだったのだから構わない……。 あの番長のせいとはいえ自分がカードを使った為に招いた事態だから責任もあるし。 けいこの子供や、春香達が解除出来る道具を持っていれば万事OKなのだが。 「……じゃあ、頼む。 本当は破いて貰うのが一番てっとり早いんだがな」 「うっうー、わかりました! それじゃあ、行ってきますね!」 その後、この惨状(けいこと番長の死体が目の前にある)を見た参加者が誤解を招かぬように、 という事でけいこのデイパックに入っていた地図の裏にペンに走り書きで、 『この人は殺し合いに乗ってませんv 高槻やよい』と可愛らしく書き、 簡単な自己紹介をしあった後、やよいは屋上へと上る。 そして……。 大きく息を吸い込んだ後、手を大きく広げ。 大空へと舞った。 自由と孤独の翼をつけ、あの天空へ―― 【削除番長@陰陽ファンタジーⅦ 死亡】 【永井けいこ@永井先生 死亡】 【残り 54人】 【D-1 城・内部/一日目・朝】 【日吉若@ミュージカル・テニスの王子様】 [状態]:かなり疲労 六芒星の呪縛 [装備]:ドリル@ミスタードリラー [道具]:支給品一式 食料2人分、水2人分、C4プラスチック爆弾@MGS、ヒラリマント@ドラえもん 、マカビンビン@うたわれるものらじお [思考・状況] 1 手段を問わず、主催に下克上する。 2 下克上の障害は駆除する。 3 とにかく六芒星の呪縛を解きたい 【D-1 城付近・上空/一日目・朝】 【高槻やよい@THE IDOLM@STER】 [状態]:疲労、打撲痕小、やよい鳥 [装備]:ウイングの羽飾りと翼@星のカービィ [道具]:支給品一式×2、モンスターボール(ことのは)@ポケットモンスターヤンデレブラック、ゴッドクラッシュ@ゴッドマン 盗賊の棺桶@勇者の代わりにバラモス倒しに行くことになった、THE IDOLM@STER MASTER ARTIST01~10@THE IDOLM@STER DMカード(マジック・シリンダー、六芒星の呪縛、攻撃誘導アーマー)@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ(現在使用不可)、 [思考・状況] 1.永井兄弟と765プロのアイドルを探す 2.六芒星の呪縛を解けるアイテム、人を探す 3.出来るだけ早く帰ってけいこさんの遺体を弔ってあげたい 4.「ことのは」はできるだけ使いたくない 5.人は絶対に殺しません 6.日吉さんって本当に中学二年生? ※城内部の日吉がいる場所には、永井けいこと削除番長の死体があります ※気合のハチマキ@ポケットモンスターは番長の腕に巻かれたままです ※けいこの支給品はやよいが持って行きました。番長の支給品は城内部に放置されています ※そのすぐ横の机にはやよいが書いた『この人は殺し合いに乗ってませんv 高槻やよい』というメモがあります ※ウイングの翼の効果により空を飛べますが、常に腕を上下に振らなければならないので大きく体力を消費します sm71:それぞれの誓い~英雄の条件~ 時系列順 sm73:対象n sm71:それぞれの誓い~英雄の条件~ 投下順 sm73:対象n sm53:ロシアガールでJOJOまで 削除番長 死亡 sm58:GO MY WAY……? 永井けいこ 死亡 sm53:ロシアガールでJOJOまで 日吉若 sm85:解呪/Disenchant sm58:GO MY WAY……? 高槻やよい sm95:ぼくんちのニコロワ(前編)
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あらすじ 登場アイドルふれあい プロローグ メイン MV(並び順) エピローグ 楽曲 その他実装日 小ネタ 前後のメインコミュ センターアイドルの他のソロ曲メインコミュタグ一覧 あらすじ 次の定期公演で『蒼い鳥』を歌う千早に一日 密着取材が。劇場で歌うのは無意識に避けて いたと語る千早は、なぜ今歌うのかと問われ 「自分を知ってほしかったから」と答える。 この歌があまりに己自身だからこそ。 登場アイドル ふれあい 如月千早、松田亜利沙、天海春香 プロローグ 如月千早、松田亜利沙、天海春香、三浦あずさ、百瀬莉緒 メイン 如月千早、松田亜利沙、天海春香、三浦あずさ、百瀬莉緒 MV(並び順) 如月千早 エピローグ 如月千早 楽曲 蒼い鳥(ニコニコ大百科(仮)へ飛びます) その他 実装日 2022年1月29日 小ネタ ミリシタでは、ゲームバージョンの音源ではなく 大幅にアレンジがされているM@STER VERSIONが 採用されている。それに合わせて、振り付けも 変更されている。 前後のメインコミュ 前:第101話 あふれる欠片を抱きしめて 次:第103話 私だけの勇気 センターアイドルの他のソロ曲メインコミュ 第47話 明日への軌跡 タグ一覧 三浦あずさ 天海春香 如月千早 松田亜利沙 百瀬莉緒 名前 コメント すべてのコメントを見る
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蒼い鳥 + 目次 概要 登場作品アスタリア 関連リンク派生技 関連技 ネタページ 概要 ▲ 登場作品 アスタリア 習得者 如月千早 分類 秘奥義 属性 HIT数 72 範囲 ATK 120% OL 72 台詞 ▲ 関連リンク 派生技 ▲ 関連技 ▲ ネタページ ▲
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蒼い鳥 結論から言おう。彼は死んだ。 だが、考えてみてほしい。 もしこの事実だけを受け入れるのならば、それこそ死者が死体となるように、 人は死ねばモノになるという生→死の図式しか成り立たない。 死というあまりに強大な怪物を前にして、我々はその一歩前の事実を喰われてしまう。 そうすれば後に残るのはセピア色の思い出だけだ。 思い出というのは、思い出さなければ形にはならない。 それも美しいのだろうが、この理不尽な暴力を与える世界では、普通に残るそれもきっと思い出にすらならない。 人間としての生を捨てた彼が求めたのは、そんな単純で生温いものではないはずだ。 目を向けてほしい。刮目せよ。彼の生き様を――――真に為したかったことを。 身体が軽い。いつの間に自分の身体にはこんな重荷が圧し掛かっていたのだろう。 触覚のない天使の身体でもいやというほどそれが感じ取れたが、今はその重みは少ない。 迷うことなく1歩を踏み出せるということが今更過ぎるが不思議だった。 世界と思い人、彼は常にその2つを天秤に掛けられ、しかしいつも2つを手にしてきた。 彼はどちらか片方を犠牲にするのではなく、両方を助けようとする人間だった。 この世界でも彼が同じ道を選ぶのは至極当然と言える。 だが、この悪臭漂う世界で彼の理想は壊された。 世界と思い人、彼は常にその2つを天秤に掛けられ、遂にどちらかを犠牲にしなければならなくなった。 それも自分の命すらも捧げなければいけないほどに。 だからと言って、彼は座り込みはしなかった。出来なかった。 諦めるということだけは彼の全てが許さなかった。 そして村で出会ったエターナルソードと思い人。 奇跡の申し子である彼の下に天恩が舞い降りる。 確かに彼は助からないかもしれないが、理想を求め両方を手にする彼らしく、2つとも手にすることが可能かもしれないのだ。 信念を形にすることが出来る、という焦りがいつの間にか彼の翼を雁字搦めにし、両方を得ることを「強要」した。 崩れた理想でただ積み直した理想は、しょせん元の理想より劣る。 むしろ足りないピースがあるのだから悪性になると断言しよう。 風を受ける帆を支えるマストを立て直すには、新たな材料が必要なのだ。 (自分の足で立ち、自分が望むことを望むように! 自分の心のままに、自分で考えて、自分で選べ!!) 手に握っているペンダントが教えてくれる。お前が本当に望むことは何なのかと語りかける。 いいか、元に戻すだけならさっきの男だってしようと思えば出来る。 お前が求めているのはそんな表面的なものではない。大事なのはその「先」だ。 彼は自分の心の声を聞き、翼を縛る縄を噛みちぎった。 ある意味では、この彼の思いはそれほど野蛮で、乱暴で、恐ろしく力強くひたすらに進むものなのだ。 過言しておくと、彼の瞳はだからといって獣じみたものではない。 真っすぐな、実に少年らしい瞳である。 (望まずとも好まざるとも、心が命じるならば例え未来など無くても体は動く。それ以上に望むべくはない) 彼はある男の手紙の文面を思い出していた。届かぬ月に飛ばした紙飛行機、その内側に書かれた文章。 先に叫んだ男の言葉とそれが重なり、更なる心の昂ぶりを生む。 自分の心が命じるままに――初めは、諦め切れない自分を思い出させてくれた。 そして今は、新たな意味を作り出し、もう1度炎に薪を加えてくれる。 夕方の中、段々と日は落ちていくだろうが、彼の心は燃え上がっていた。 月に届かない紙飛行機、それは叶わぬ理想の象徴であった。 しかし、どうなろうと確かに理想を乗せていた。 大事なのは結果ではなく意思、自分の思い。 それに、一体どこまで飛べるのか……それに心を躍らせるのも、1つの楽しみ方じゃあないか? さて、この間に何秒使っただろうか。 1秒に語れる文字は意外と多いが、60秒に語れる時間は思いのほか短い。 彼は目の前に金髪の少女を見据え、時空の力を帯びさせぬままウッドブレードを抜き放った。 手にはペンダントを握ったままだった。 少女が持つ曲刀、青い瞳。本来の得物であるチャクラムを用いていないこと以外は、外見は彼が知る彼女そのままだった。 違うのは中身、否、彼女に纏うオーラか? 彼は彼女を変えた何かを知らない。 それでも「取り戻す」と思えるのは、正しく彼が見知った彼女とどこかが決定的に違うからだ。 天使の尋常ではない脚力で接近。口を真一文字に縛らせたままの少女は待ち構えるかのように剣を中段に構える。 彼の知るぽやーっとした彼女とは違い、ひどく焦りを感じさせる表情だが、双眸に乗せられた戦意だけは本物だった。 交錯。両手に握られた木刀のうち、左の1本が少女の刀と打ち合う。 連続して右から一撃を加えるもすぐに捌かれる。彼女の右足が空になった左側の腹を鋭く狙う。 それをバックステップで避ける彼。空を切る音を立てて逃し、足を地に付けた彼女もまた1度下がり距離を取った。 所要時間約5秒、紛れもない戦闘に彼、ロイドは確信する。 相手の攻撃にこれといった躊躇はない。 本当にコレットなら少しでも攻撃は鈍りやしないかという、彼らしい甘い考えだった。 「コレット……頼むよ、目を覚ましてくれ!」 真っ先に考えたのが、操られているという可能性だ。 己の戦意を否定するかのように、ロイドは双刀を下げる。 しかし彼女は乱れた髪を整えるように髪を1度大きく振った。 元に戻った髪形の向こう、相貌には強く冷たい光が湛えられている。 『無理よ。出来るものなら、彼女はとっくにしているわ』 声は少女のものだが、やけに落ち着き払い統一されたトーンに、彼は顔を引きつらせた。 「お前、誰だ」 『名乗る理由はないわ。私はあなたのことを少しだけ知っているけど、あなたは私のことを知らないでしょうから』 素っ気ない返事を聞いて、ロイドは少しずつ表情を緩めていき、間を置いて笑った。 彼女は何のことかと唖然とする。 「そっか、そうだよな。人に名前を尋ねるときは、まず自分が名乗ってからだ」 誰に言うともなしに1人ごちて、彼は双刀をゆっくりと構えた。 自らの身体の中にある、留まったままの懐かしい空気がどこか心地よかった。 「俺はロイド・アーヴィングだ。もしコレットを返すつもりがないなら、俺は本気で行く」 思わぬ口上に彼女は額を押さえていた。 いくら医者でもさすがにこんな馬鹿に付ける薬はない、とでも言わんばかりの呆れ返った仕草は実に大人らしく見えた。 冷やかな瞳は明らかに軽蔑の色を見せている。夢見る子供を諭すような、そんな現実的な大人の色。 それでも、腕に隠された目から見える僅かな羨望は、にじみ出る涙のように奥から姿を現し始めていた。 それをロイドは見た。しかし、彼にはどうしてそんな顔をしているのかは分からない。 答えに辿り着く前に彼女は腕を下ろし、そして表情を消して剣を構えた。 『こちらにも事情があるの。諦めなさい』 彼女が握る剣のコアから光が漏れる。 周囲に冷気が生まれ始め、微かに視界が白く霞がかる。 冷え切った靄は辺りの景色をうっすらと消していって、中心の彼女だけが白いヴェールの中ではっきりと存在していた。 誰にも邪魔されない2人の世界が構築された。 例え数十秒の間でも、これほど取り戻すのにおあつらえ向きな配慮はない。 ロイドは剣を握る力を強めるイメージを浮かべた。次から一気に目まぐるしく動く。 ぴき、という音。 『アイスウォール……防壁展開!』 彼女の剣から一段と強い光が放たれ、ロイドの足元から2メートル近い氷壁がせり上がる。 彼はそれを大きく後方へ跳んで避け、次いで一気に壁へと向かって走り込む。 地面の土がめくれるほどに力を込めて駆け、目の前に見える氷壁に鼻が付きそうなほどに近付き、 足を勢いそのままに1歩出し、更にもう1歩出し垂直の壁を大股で上がっていく。 天使化により強化された脚力で3歩目には跳躍で壁を飛び越え、飾りだけの皮肉な翼で彼は飛んだ。 障壁の向こうには彼女がいる。光る、足元の少女。 空中の人間というのは格好の的なのだ。 『アイシクル、鋭状射出!!』 空を漂う彼に氷の柱が迫る。色のない透徹の槍。 先端の鋭いそれに貫かれればひとたまりもない。人間なら、の話だが。 時空剣士、それは時と空間を渡り、世界そのものを侍らせる力を持つ、人には過ぎたる力の権化。 彼は心臓を失くし己の時を止めた上でこの力を持つ――正に、人としての境界を越えた先にいる者なのだ。 つまり、何てことはない。 木刀に蒼い波動が纏い、本来の間合いを越えて剣先から更に光の刃が伸びる。 それを向かい来る氷柱へと振り落とした。 確かに、氷柱は厚かった。 しかし、その厚さと硬さをもろともせずに、時空の力を帯びた一振り、「次元斬」は氷を打ち砕いたのである。 冷気の中で氷の断片が各々様々に舞う。落ちていくものも目の前に迫り通り過ぎていくものもある。 第1波、第2波と氷は広がり、道を開くかのように散っていた氷の向こうに、彼女は――――いない。 目でそれを理解した瞬間に彼は耳を張った。 氷が地面に落下し崩れる音の中、たたと奥へ奥へと走り去っていく足音。 白い靄が消え、姿の小さくなった彼女が網膜に結ばれる。 相手も天使である。息が切れることはない。 着地した0.5秒後に彼は駆け出した。 「逃がすかっ!!」 目前の少女は少しずつ大きくなる。 いくら相手も天使だろうと、男女の差とエクスフィアの身体強化箇所の違いは、本来人と人の間に生まれる能力差を再現する。 ゆえに彼が彼女に追い着くのは自明だった。 少女は僅かに振り返り眉間を寄せた。やはり面持ちはおっとりとした少女らしくない。 ジャッジメントによって半ば崩壊した村を2人は駆ける。 とはいえ、燃えた倒木や家屋の残骸があるために、駆けるといっても元の位置からは大して離れてはいない。 なるべく減速を抑えつつ木々を飛び越え、東へと向かう。 暖色の光が差し込むこの村でのチェイスには、青春じみた爽やかさなどかけらもなかった。 むしろ、メロドラマティックな倒錯が見え隠れしている。 「取り戻す」というきれいな意思は一種の我欲のかたまりでもあり、 羨望を見せながら反抗し、退避するという矛盾は紛れもなく逃避である。 互いに近寄らぬ平行線ではなく、求めながらすれ違うねじれの関係。 線は伸びこそすれど、それは決して交差した十字になることはない。 更に速度を上げようとしたのか、少女は強く力を込めた1歩を踏み出した。途端、身体がぐらりと傾いた。 あ、と彼女は儚げに呟く。 足が地面に喰われていく。身体が前のめりに倒れていく。 自身の経験から、ロイドは最悪の展開を思い描いた。 口元がひとりでに動き大きな穴を作る。喉の奥が震え、大気が震撼する。 それを前に木の双刀が落ちた音など、他愛もない。 彼は思い切り駆けた。 少女の身体は、この世から存在を滅しようとしているかのように少しずつ消えていく。 そんなこと許すものか。 本当の願いを、自分にしか救えないものを掴むためにここにいるのだ。 手離すものか、手離させるものか、掴め、掴むんだ。 広がる穴は真に地獄への門。くぐってしまえば、待つのは死と辛苦。させない。 けれども、伸ばす手は届かない。 彼と彼女の間にはまだ少し距離がある。肉体的にも精神的にも。 そして、距離は永久に無限になる。否、実数やゼロですらない、マイナスだ。 彼女の身体が消える。終った。終った、筈だった。 さて、世界や神や精霊は歴史の改竄だと罵るだろうか? まさか。彼はただ空間を渡っただけで、そして現実としてこの事実があるのなら、それはもはや運命だ。 がしり、と感覚はなくとも掴む手。 ぶらぶらと少女の身体は揺れて、背中を土の壁へと預ける。 後ろから彼女の手はしっかりと掴まれていた。 少女はゆっくりと頭上を見やる。青い翼の赤ずくめの男がそこにいた。 彼の周りに漂う青い光が透けて消えていく。ここまでの時間、約30秒。 時空剣士を相手に彼は「次元斬」をラーニングした才能をもって、 彼は何度も何度も相手にした空間を渡る「空間翔転移」を為してみせたのだった。 それはほぼ無意識下の行動と言える。ゆえに人間としてのリミッターを越えて、彼は空間を越えたのだ。 『あなた……どうして』 彼女は呆気に取られたように言った。 「どうして、って……ここまで来て諦められる訳ないだろ!?」 彼は手を掴んだまま、下方へいる彼女へと大きく叫んだ。 白い靴より先に見える土の槍が、魔物の牙のようなそれが、獲物を喰えなかったと嘆いている。 その嘆きを逆に嘲るかのように、彼女は短く笑う。 『そうしたところで、何も変わりはしないのに』 「変わる。変わらなくたって、俺が変えてやる」 彼の言葉に、少女は顔を下へと傾けた。 『なぜ、どうして必死になれるの? 例えこの子が元に戻ったところで、喜ぶのはあなただけよ』 「だから何だって言うんだよ!」 身体を引き上げようと彼は力を込める。 感覚はなくとも、後ろから手を握ったままでは下手すれば落ちかねない。 「俺はコレットを助けるって決めたんだ。そこにどうしても何もあるもんか。絶対、助けてやる」 嘘ではない。彼は仲間にクレスの相手を頼んだときから、絶対に取り戻すと心に決めた。 取り戻してみせる、ではない。取り戻すという断定的な言葉で決めたのだ。 彼女は俯いたように見えた。 『子供は真っすぐね。無垢でも、歪んでても、真っすぐだわ』 「まるで自分は大人みたいな言い方だな」 『少なくともあなたの100倍近くは生きてるの。 ……そう、なら、あの人に期待すること自体が間違いだったのかもしれない』 ――大人になるって、少し悲しいことね。 そう小さな声で呟いたように聞こえた。 彼は少女の身体を引き上げ、足で立つ地表の上へと戻す。 嬉々として彼女に近付こうとして、不意に足を止めた。彼女はすくっと立ち上がり、コアの光る剣を彼へと突きつけた。 『やれるものなら、やってみなさい』 強い眼光には、怒りと悲しみと少しの嫉妬が混じり合っていた。 晶術の光が増し、辺りを白く染める。 彼に阻止するべく詰める間合いなどなかった。 何せ彼女がいるのは1歩先、思い切り手を伸ばせば届く範囲にいるのだから。 それでも彼が止めないのは、この大人びた少女という壁を越えなければ、届かないと思ったからだ。 『アイスニードル、一斉放射ッ!!』 限りなく至近距離で繰り出される氷の針。 彼女の頭上から繰り出された疾速のそれはロイドの身体を貫いた。 腕に刺さり、足に刺さり、腹にも肩にも刺さり、最後の1本は白い布で覆われた左胸を貫いた。 その1本だけは、穴を作り出す前に既に空いていた穴をすり抜けていった。 がき、と後方で音がして、通り抜けた針は地に刺さった。 それでも、ロイドは立っている。 2本の足で真っすぐに、立つべくして彼は立っていた。 彼女はあるべきもののない左胸を見て愕然としながら、彼の顔へと目を移した。 茶色の瞳をまばたきさせている彼は、彼女に手を伸ばそうとしている。 お姫様に手を伸ばそうとしている時空剣士、先程と構図は何ら違わなかった。 彼女は目一杯、手中の剣を突き出す。 はい、おしまい。 剣は、受け止めようとした彼の左手を貫き、約束の60秒は過ぎた。 甲から刀身が飛び出し、赤い手を真ん中に吊るしている。 彼女は目の前の少年を見る。彼は優しげな笑みを浮かべていた。 貫かれた左手で刀身を握る。握る、というよりは添えるという方が正しいかもしれなかった。 そして彼は、ずっと右手で掴んだままだったペンダントを、器用に彼女の頭から通していく。 例えばそう、シロツメクサの輪飾りを女の子にかけてあげるように。 まるで似つかわしくない、という風に少女はひどく酷薄に笑った。 彼に刺さっていた氷の針が消え、あまり多くはない血と傷口だけが残った。 掴む手などお構いなしに剣を手元に引き抜き、視線を彼へと投げかける。 『よかったわね、コレット。あなたの王子様は来てくれたわ』 彼女の目は青と赤が交互に点滅するという異常事態を起こしていた。 どっちつかず。プログラムエラー。水面に上がるように、意識の浮上。 最後の鍵が錠前に差し込まれ、錠は落ちて扉が開く。 扉を守っていた門番は手のひらを扉の方へと広げた。 『あなたは来た。でも私にはきっと来ない。あなたのように、座り込んで待つこともできない。 立ち止まって座り込めればいいのに、私は動くことしかできない』 少女の声に、ロイドは手を下ろして微笑んだ。 「俺も、座り込めたらって思った。でも動くしかないって分かったし、動けるうちに、本当の願いを見つけられた」 彼の言葉に、少女は少しだけ目を大きくした。そしてつられて僅かに笑う。 「あんたが誰なのかは分かんねえし、何があったかも知らない。 けどさ、あんたの中にも何か引っかかるものがあるなら、その気持ちを信じてみるのも手だと思う」 彼女は目を閉じ、少しして伏せ目がちに開けた。瞳に込められた憂いは未だに消えてはいない。 沈黙したまま彼女は背を向けた。 そして剣を逆手へと持ち替え、哀感を誘う茜空へと顔を上げる。 彼女が何を見ているのか、ロイドには分からない。 『申し訳ありません、任務に失敗しました。しかし器は無事、未だチャンスはあります……ただ今より帰還します』 そしてロイドは、彼女は見ているのではなく聞いているのだと理解した。 正確な位置は掴めないが、確かにここではないどこかで微かに音が聞こえる。 彼女は剣を持った腕を上げる。淀みのない声とは裏腹に、手は小さく震えていた。 一気に後方へと引き絞る。 『私に、最後のチャンスを』 天使の腕力は、女でも扱えるほどに軽い曲刀を遠く飛ばす。充分過ぎる力だった。 震えによりぶれた手が、剣を一体どこへ飛ばすのかは分からない。 刃が夕陽の赤い光に煌いた。 少女は見送るようにその剣を見ていたが、その実、見送っていたのは剣の方だったのかもしれなかった。 きれいな放物線が確実に離れていく距離を象徴する。 親鳥から雛が巣立ったのか、共に育った雛より先に発ったのか。剣は少女の下を去っていった。 剣が消え、空はただ子供はもう帰る時間だよと告げている。 長い金髪にいっぱいの陽光を宿し、少女はゆっくりと振り返る。 ふわりとした前髪の向こうに覗く2つの目は青に戻っていた。 白い手袋の少女、コレットはそこにいた。 「コレット」 ロイドは、その五指をゆっくりと彼女の下へと延ばす。 その指の滑らかさは、風がおもむろに吹けばあれよと散ってしまうような華を愛でるように移ろっていた。 「……不思議だね」 不意に放たれた彼女の言葉に、その手が止まる。 彼女の手は彼の指に向かうことなく、そのペンダントの冷たさを確かめるように舐っていた。 「リアラに渡したのに、還しに来てくれたのはロイドだなんて」 ロイドはその女を知らない。 又聞きでいくつかのことを知ってはいたが、今彼女の口ずさむ名前に込められた音調に比べれば無意味に等しい。 それほどまで、ロイドには彼女が抱える瑕疵の深さを実感できた。 夕に吹く木枯らしは不感の身にも冷たい。 彼女の顔には、悲しげな笑顔が張り付いていた。 「リアラは好きな人がいるって言ってた。きっとその人と会えたんだと思う」 彼女の青い瞳は霞んだように遠くを見ていて、ロイドは自分を突き抜けて見られているかのような錯覚を覚える。 赤く染まった空に浮かぶ陽は、在りし日の残照だけを照らして、残った現在を薄影として黒く染めていく。 「でも、二人は、遠くに、遠くに離れ、はな、離れになっ……ちゃ、った。きっともう、あっ、逢えない」 淀む声。吹き抜けた旋風が映える彼女の金髪を揺らし、笑顔を簡単にさらっていってしまった。 ペンダントをきゅうと握り締めるコレット。 背に重い何かを載せているかのように、彼女は身体を屈め、握る手は震えていた。 目をぎゅっと閉じ、小刻みにこぼれる吐息は夕方の寒々しい空気に冷やされている。 ロイドは思わず近付こうとしたが、上げられた彼女の瞼の、その奥にある真摯な瞳に撃ち抜かれて、またしても足を止めた。 何かの決意のように見えるそれは、どこか寂しさを帯びている。 「――――私が、リアラを殺したから」 風が凪いだ。限りなく減衰率を抑えた大気を通る一言一句がロイドの耳朶を正確無比に打ち付ける。 「コレット」 ロイドはようやく彼女の罪を知り、無意識的に慰めるかのように声をかけた。 名前を呼ぶ彼の声に、彼女は少しだけ肩をなで下ろした。 しかし、瞳に秘められたものは変わらない。それどころか彼女は顔を俯かせた。 光が弱くなってきている中、陰鬱な影が彼女の顔に落ちる。 「この島に来て初めて会った女の子で、いい人だった。友達にも、なれたんだよ。 でも、死んじゃった。私が殺したから。ううん、きっとそれだけじゃない。 クラトスさんもサレさんも、マグニスも。みんな、いい人も悪い人もあそこで死んでいったの」 つらつらと発せられる彼女の言葉に、彼は閉口するしかなかった。 放たれた父の名も、知らぬ者の名も、かつての敵も、重々しい声の前では意識の片隅でしか収まらなかった。 俯いたままの少女の目は、その先の土を眺めているとはとても思えなかった。 もっと暗い、それこそ地獄のような光景を見ているようだ。 口を開きかけて、 「ロイドはきっと私のせいじゃないって言うと思う。でも全部私のせいなんだよ」 先手を取られてしまった彼はただ苦しそうに黙るしかなく、 半端に開いた口は、ないはずの息苦しさを埋めるための酸素を吸うしかなかった。 「私が捕まらなければきっと誰もあの城には来なかった。あの夜は始まらなかった。 私が私を捨てなかったらきっとリアラは死ななかった。ミントさんもアトワイトも苦しまないで済んだ。 私が、私のせいで、クレスさんはきっと……」 絶え間なく紡がれる彼女の自責に、彼は言葉では応えるのではなく、小さなコレットの身体を抱き寄せるしかなかった。 腕を抱き、俯いたままの顔を覆うようにして彼女を包み込む。 彼女は無言で震えたまま、そっと彼の服の裾を掴む。 震えが収まることはない。心を落ち着かせてくれる心臓の鼓動の音は、彼女には聞こえない。 擦り切れた布地と乾いた血のざらつきだけが、ただ彼女の皮膚を満たしているだろう。 今まで出会いはしなかったがために、ロイドには彼女の罪はどこまで真実でどこまで虚構なのかは分からない。 だが、語られたほとんどが、彼女が直接手にかけたのではないことを証明している。 それでも彼女には自分が傷つけたとしか思えないのだろう。真実よりも残酷過ぎる罪だった。 「ごめんね、ロイド」 僅かな時間の後、彼女は惜しむように、しかし断ち切るようにして手で彼を後ろに押す。 拒むような、触れてしまわないような行為に、ロイドはただ彼女を見るだけだった。 「そんなにぼろぼろになって、それでも私を元に戻してくれて。 でも、こうして元に戻れたのに、私は嬉しくない。ロイドと会えたのに、ちっとも嬉しくなれないの」 その言葉とは真逆の儚い笑顔が、彼にはとても痛々しかった。 「コレット」 ロイドはただただその名を呼ぶ。そうするしかなかった。 拒む彼女を無視して両腕を背中まで回し深く抱く。それでも腕を下ろしたままの彼女の真横に、彼の顔はあった。 「私、ロイドに合わせる顔なんてない。私のせいでたくさんの人が傷付いた。 そんな私に、心臓を失くして、身体まで殺して、魂まで擦り切って――――そのエクスフィアを捨ててまで救われる価値なんて、私にはない!」 もうこれ以上罪を背負えないと、泣き叫ぶような声だった。 失くした心臓があった箇所にすきま風が通るような、そんな違和感を胸で覚えた。 彼の左手にあるエクスフィア、母の命から創り出された石は、先程の一撃で亀裂が生じていた。 今の間にも刻一刻とひび割れは広がっている。完全に砕けたときに彼の蒼い翼は消える。 現に、今も背中の翼はマナが拡散し始めているのか、大きさと色彩を薄めてきている。 元々あったタイムリミットなど関係なくなってきていた。 しかし、彼にはそんなことは関係なかった。 ならばこの時間は彼に許されたロスタイム。 今の彼にとって大事なことは、彼女を愛おしく抱き締めることと、もっと別の事柄なのだから。 身体を震わせロイドの肩で咽ぶコレットの声の中、ロイドはゆっくりと口を開いた。 「価値ならあるさ。俺はコレットを助けたかったからこうしたんだ」 全てを汲み取った上で、九割九分の素直さにほんの少しの悔悟が混じった、限りなく人間らしい言の葉だった。 彼にはコレットの震えは分からない。温もりだって感じ取れない。 彼の言葉は、それでもまやかしではない。 例え彼にとって触れるということ自体に意味はなくとも、彼女の気持ちは自分のように分かるのだ。 耳元で聞こえるぐずり声が、張り裂けそうなほどの悲痛を訴えている。 この少女はとても優しいから、人より多くの重荷を背負ってしまう。 昔から、世界再生の旅から、ロイドはそれを知っている。 自分はいつも彼女を支える側であって、それでいて時には彼女に支えられる側でもあった。 互いに互いを埋める関係でもある2人は、両者の思いをよく理解していた。 価値はある。それはロイドにとって唯一無二の真実だった。 「ひどいよ。そうやって優しい言葉をかけて。友達を殺すって、ロイドが思っている以上にひどいことなんだよ」 「ああ、そうだな」 「だから、ダメなんだよ。こんな、ロイドに抱き締められて喜んじゃいけないの」 未だ手を下ろしたままの彼女と、その言葉に抗うようにして、彼は少しだけ強くコレットを抱きしめた。 彼女は手をぴくりとだけ動かしたが、すぐに下ろしていってしまう。 一抹の静寂。吹き抜ける風の音だけがする。 「俺も、色んなものをなくしてきた。守りたかったものも、信じたかったものも、いつか叶えたかったことも」 今までより一層生い茂った森のように陰鬱を込めたその言葉に、コレットは腕の中で僅かに動いた。 「俺も、今さっき仲間に犠牲にしてきた。今この瞬間もそいつは、俺のために時間を稼いでくれている。 ごめんな、コレット。穢れているって言うなら、俺もそうなんだよ」 ロイドの指の先にぎゅっと力が込められる。 深く彼女の腕に食い込むが、情けないことに彼女が感じるだろう痛みは頭から抜け落ちていた。 離してしまえば、もう2度とできない。そんな錯覚がロイドの中で生まれていた。 この言葉だけは、きっとコレットが知るロイドの言葉ではないだろう。 また指に込められた力が強まる。 「それでも、俺はコレットに笑ってほしかったんだ。コレットの笑顔が見たかったから、ここに来た。 いつもにこにこ笑ってて、たまにドジで壁を破ったりして、それでも笑ってるコレットが見たくて来たんだ」 少し驚いた様子を見せる彼女と共に沈黙が流れる。澄んだ空気は言葉の伝導率をよくしてくれているのだろうか。 ロイドがふっと顔を上げた。彼女も上を見上げていた。 青さも黄ばみも手離した空が、急に赤く色つき始めている。 雲1つなく広がる赤の天蓋の、その雄大さをもってしても2人の傷は癒せなかった。 「……無理だよ、私は、もう笑えない」 高く高く空は赤く、コレットの言葉は宙に掻き消える。 「約束もしないし頼みもしない。辛いときは、立ち止まって思い切り泣いたりしていい。それで、十分泣いたら」 それも分かっているからと、全てを受け入れたまま、ロイドは笑った。 「いつかもう1度、笑えばいい。――――それできっと……」 ――俺は救われる。ロイドは出かかったその言葉を喉の奥で抑えた。 言えばきっと彼女を呪う。ロイド・アーヴィングという人間がただ欲したものは、それでは得られない。 彼女は欲しいが、言ってしまえば永久に得られなくなると思った。 救うという言葉も、今浮かべている笑顔も、本当は彼女にはとても残酷なものだ。 約束も頼みもしないと言ったのに、彼女は優しいから、 この言葉を誓いにとして縛られたままの笑顔で生きていくことになるだろう。 それでは、彼が求めたものにはきっと辿り着けない。 彼が求めたものは、本当の彼女の笑顔だ。 「私は悲しくしか笑えないよ」 「いいよ。ずっと悲しいままじゃない。いつか心から笑える日が来れば、それでいいんだ。 俺が言うんだから、絶対そうなる」 彼女は笑えないと言う。 だが、自分が理想という鎖から解き放たれて自由になったように。 彼女もいつか罪を乗り越えて、自分を乗り越えて笑えるようになる……そんな自信がロイドにはあった。 これも願望なのかもしれなかった。そうしなければ自分は救われないのだから。 彼は抱擁を解き、コレットから離れて彼女の顔を見つめた。 悲しげな表情のまま、涙の溜まった瞳が見つめ返していた。 夕方の和らいだ光を目の潤みが反射している。たまらなくそれが愛おしい。 そしてゆっくりと彼女の白い片手が顔へと伸ばされ、人差し指が彼の目元をぬぐった。 「ロイド、泣かないで」 彼には言葉の意味が理解できなかった。思わず小さく笑ってしまう。 「何言ってんだよ。俺が泣くわけないだろ? だって天使になったんだから、俺」 健やかな笑みを浮かべたまま、彼は目を確かめることもなく立っているだけだった。 彼女の白い手袋は、先端が少しだけ水に染みていた。 彼には、涙が込み上げるときの熱さも頬を伝う感触も分からなかった。 流れる涙は彼のあずかり知らぬところで夕陽に輝く。 背中の大きく蒼い翼がかすれて消えていく。それすらも彼の意識の埒外だった。 コレットは一瞬手を伸ばそうとして、それを抑えるかのように胸元で手を組んだ。 「ごめんね、ロイド」 夕焼け空に縁取られた彼女の顔は、俯いてしまったことで影を生んで彼には分からなかった。 きっと、彼にとってそれは幸せだったのかもしれない。 夕焼け空が歪み、手を組んだ彼女の背後に、時空剣を握るもう1人の王子様が現れる。 【ロイド=アーヴィング 生存確認】 状態:天使化 HP15%(実感無し) TP15%(TP0で終了) 右手甲損傷 心臓喪失(包帯で隠している) 砕けた理想 背中大裂傷 顔面打撲 右頬に傷 太股と胸部に傷 全身に軽微の刺し傷 左手甲刺傷 エクスフィア破損 本当の願いを見つけた 所持品:エターナルリング イクストリーム ジェットブーツ 漆黒の翼のバッジ フェアリィリング 基本行動方針:コレットに笑ってほしい 現在位置:C3村西地区・ファラの家焼け跡前 ※ウッドブレードは近くに放置してあります。 【コレット=ブルーネル 生存確認】 状態:HP90% TP15% 思考放棄? 外界との拒絶? 所持品(サック未所持):苦無×1 ピヨチェック 要の紋@コレット 基本行動方針:悲しくしか笑えない 第一行動方針:??? 現在位置:C3村西地区・ファラの家焼け跡前 ※アトワイトについては詳細不明。ただし、機能はしています。 エクスフィア強化S・Aは北の方角へと飛ばされました。 【クレス=アルベイン 生存確認】 但し、詳細なデータは不明とする。 前 次
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作詞:森由里子 作曲:NBGI(椎名豪) MASTERPIECE 02 MASTERPIECE 04 MASTERPIECE 05 MASTER ARTIST 05 MASTER LIVE 02 M@STER VERSION M@STER VERSION REM@STER-B ANIM@TION MASTER 02 歌姫楽園 imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (am02j2.jpg) TV ARRANGE M@STER VERSION 名前 コメント タグ ED曲 千早 森由里子 椎名豪 蒼い鳥
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136 名前:この名無しがすごい![sage] 投稿日:2012/06/02(土) 19 49 31.81 ID 99kJpE24 [5/10] 134 初めてのレビューなので上手く書けてるか心配だが書いてみる 【作品名】IS ‐イギリスの蒼い鳥‐ 【作者名】寂れた錆 【URL】ttp //ncode.syosetu.com/n4577bb/ 【ジャンル】 女オリ主・恋愛 【長さ】 長編 【状態】 連載中 【原作からの変更点】 女の子オリ主に明確に好意を示された一夏の視点で描かれていく恋愛モノ 原作と異なり明確に目的を持って努力する一夏さんのイケメンぶりを見ていると もげろとは言い難い 個人的に完結まで頑張って欲しい作品の一つ なお食べ物描写が大変素晴らしい為、夜中に読むことは勧められない 142 名前:この名無しがすごい![sage] 投稿日:2012/06/02(土) 20 37 37.03 ID XiX9/i5b [6/10] 136 サンクス!じっくり読ませてもらいます 138 戦闘が雌雄同一体の交尾や、卵を孵化させるための熱に近いものだったりして 139 原作の設定を再現するにはどうしたらいいかって考えるのはなかなか楽しいぜ
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曲Data Lv BPM TOTAL NOTES 平均密度 ★0 105-105 437 3.65Notes/s 譜面構成・攻略 譜面画像
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蒼い鳥に誘われて◆aa/58LO8JE どうして、こんな事になってしまったんだろう。 豪奢な飾りのついたオルガンの前で、僕は椅子に座り込みながら途方に暮れていた。 視線を下に落とすと鮮やかな赤。赤く染められたズボンに包まれた、僕の両脚が見える。 僕は全身をかすかに震わせながら、ほんの数十分前の事を思い出していた。 それは3曲目か4曲目の曲を弾き終えた頃だった。 「そういえば……」 僕は自分に楽譜が支給されていた事を思い出したのだ。 最初はこんな場所でそんな物を支給された事に正直、困惑を覚えた。 けれども何の因果か、二度と触れられないだろうと思っていた音楽を僕は現在進行形で楽しんでいる。 そう考えると、L uccello blu――蒼い鳥と題されたその楽譜が僕に支給されたのも、何かしらの運命なのかもしれない。 「一度、弾いてみるかな」 小さく呟いて、僕は訝しげな表情を浮かべるユイコに楽譜の事を説明する。 そして二つ並んで置かれた鞄の1つを開けて、一番上に置かれていたそれを取り出した。 並びの歪みをを軽く整えて、オルガン上の譜面台にセットする。 五線譜の上で踊る音部記号や音符を確認しながら、僕は鍵盤に手を添えた。 呼吸で間を取った後、いつもの要領で指を動か…… 「これは……!」 そうとして、ユイコの声に邪魔をされる。 見ると、彼女は僕の鞄から何かを取り出そうとしていた。 「どうかしたの?」 僕の質問にユイコは答えようとせず、真剣な表情でそれを眺めている。 鞄から出てきたそれは真っ白い色をした洋服のようだった。 だけどよく見ると、その洋服にはボタンがついている様子も無く、よくわからない構造をしている。 「それ、何?」 「うむ、これは日本の聖職者が身に付ける衣装で、ミコフクという物だ」 再び僕が発した質問に、ユイコは微笑を浮かべながら今度こそ答えてくれた。 聖職者の身に付ける衣装。神父様がナターレの時とかに着ている、儀礼用の衣服みたいな物だろうか? 「クリス少年、これを着てみたいとは思わないか?」 「うわっ!」 突然、真後ろでユイコの声が聞こえて僕は驚いて振り向く。 いつの間にか、彼女が僕の背後に立っていた。 「ちょうど神聖な場所にいるんだ。清廉な服に身を包んで、神に音楽を捧げるなんて最高じゃないか」 満面の笑みを浮かべながら、ユイコがよくわからない事を言う。 その目がらんらんと輝いてるように見えるのは、僕の気のせいなんだろうか? 「ついでに、私の鞄に入っていたこれもサービスでつけてやろう。 何? 着る方法がわからない? 問題ない。和服の着け方ならおねーさんに任せるといい。 私が滞りなく、かつ迅速に君に着付けをしてあげよう。 だから、さあ、今すぐこれを着るんだ。と言うかぶっちゃけ着ろ」 ユイコに鋭い眼光で迫られ、僕は思わず物凄い勢いで頭を縦に振っていた。 まあ、ちょうど濡れた服を着替えたいと思っていた所なので問題ないだろう……多分。 そのあまりの気恥ずかしさに身じろぎする僕にユイコが声を掛けた。 「さてクリス少年、着心地はどうかな?」 「ゴワゴワでパツパツだよ……これ、脱いだら駄目なの?」 「もちろんだ。まあ、しばらくはこれを着けたまま演奏を続けるといい」 少し頬を赤らめながら、笑顔でユイコはそう返す。 「別に僕じゃなくても。ユイコが着た方がよかったんじゃない?」 「それだと、私が面白くないだろう」 彼女のその言葉に諦観を覚えながら、僕は鞄に着ていた制服を詰める。 そして、オルガンに向かい再び演奏を始めた。 上半身が多少動かしにくいものの僕の腕は問題なく動き、聖堂に音の奔流が溢れる。 流れは壁にぶつかり交じり合いながら1つの形を作り上げていく。 それは独りで気高く飛ぶ鳥の歌。 孤独であるが故の美しさと強さ、そして悲しさを感じさせる歌だった。 もし、歌い手がついたらどういう風になるんだろう。 そんな事を考えながらオルガンを弾いていると、不意にユイコがドアの方を見た。 その様子に僕は演奏の手を止めると、彼女はおもむろに歩を進めながらこう言った。 「どうやら客人のようだ……こちらは大丈夫だから、君はそのまま演奏を続けているように」 そうして聖堂の中心、木製の長椅子の列と10本の柱に挟まれた場所に彼女は立つ。 同時に大きな扉が音をあげて開かれる。 制服姿の少女が1人、聖堂の中へと入ってきたのを確認しながら僕は再び曲を奏で始めた。 ◇◇◆◇◇ 風に乗って微かに聞こえてきたオルガンの音に、千羽烏月は足を止めていた。 視線を向けた先には荘厳な姿をした巨大な聖堂。 長い黒髪の少女が扉を開けて中に入っていくのを見ながら、烏月は黙考する。 (仲間を集めようとしているのか、それとも罠か) どちらにしろ、大聖堂には2人かそれ以上の人数がいる可能性があるという事だ。 もしかするとその中には自らの探し人もいるかもしれない。 それを踏まえて、あそこに踏み込むか否か。 そして踏み込むとして、殺すか否か。 (あるいは、あれを使う必要があるかもしれないね……) 鞄に仕舞い込まれたもう1つの支給品を脳裏に浮かべながら、烏月は建物の影から教会を観察し続けていた。 ◇◇◆◇◇ 街中を歩いている時に聞こえたオルガンの音。 それに誘われるように私が教会の中に入ると、そこにはブレザー姿の女がまるで待ち構えていたかのように立っていた。 少し離れた場所では外国人らしい男が一心不乱にオルガンを弾いている。何故か巫女装束で。 とりあえずそれは意識の外に追いやる事にして、私はおそらくは年上だろう目の前の女に声を掛けた。 「すいません、対馬レオという男の人を探しているんですが」 「残念ながら私が会ったのは君で2人目だ」 こちらが銃を手にしているにも関わらず、女は余裕の表情でそう答える。 よほど自分に自信があるのか、それとも能天気なだけか。 そんな事を考えていると、女は自分の背後でオルガンを弾いている男に声を掛けた。 「クリス少年は知っているかい?」 その言葉に、男は首を横に振って答える。 どうやら彼もセンパイの事は知らないらしい……その事を残念がる前に、私には1つ気になる事があった。 それは女の口にした『クリス』という名前。 確か、何十分か前に会ったリセルシアという少女が探していた『先輩』もそういう名前ではなかったか。 さすがに、同じ名前の外人は早々いないと思うので、おそらくはそれで正しいのだろう。 あのオルガンを弾いている変態こそが彼女の探していた先輩なのだ。 その奇妙な巡り合わせに、不意に私は怒りを覚える。 ……私のセンパイはまだ見つからないのに、あの女の先輩はこうもあっさりと見つかってしまった。 ――殺そう。 むごたらしく、殺してしまおう。 簡単には死んでしまわないように、むごたらしく殺してやろう。 リセルシアとそう簡単に再会なんてさせてやるものか。 溢れそうになる殺意を私は無理矢理押さえつける。 そして私は目の前の女から排除しようと銃を握る手に力を込め……背後のドアが開かれる音を耳にした。 「隠れろ!」 女の叫び声と共に銃声。 オルガンを弾いていたあいつは弾かれた様に座席の影に伏せる。 釣られて私も柱の影に隠れ、女も斜め向かいの柱に隠れた。 様子を伺うと、入り口付近の柱に拳銃を構えた男が隠れるように立っている。 さてこの状況、誰から先に殺そうか。少し悩んだ後、私は―― ◇◇◆◇◇ 長椅子の影に隠れながら、僕は必死になって状況を整理していた。 黒髪の女の子が知人について質問し、それにユイコと僕が答えた後。 僕もトルタやファルさん、リセについて彼女に聞いてみようかと考えた矢先に彼は現れた。 そして、ユイコが叫ぶと同時に凄まじい音が響き、僕達はそれぞれ近くの物陰に隠れる。 相手は1人。しかしその手には銃を持っている。 どうやら怪我をしているらしく、男は右肩を赤く染めて右手を脱力したように下げていた。 だけど、彼はその怪我にも怯まず左手に持った銃を僕達に向けている。 対してこちらの武装は近くの柱に隠れた女の子の持つ銃1つのみ。 一番奥の座席側で伏せている僕は武器になりそうな物は持っていないし、 男に一番近い柱に隠れるユイコに至っては何も持っていないのだ。 せめて丸腰のユイコに武器を渡したい。 何か武器になる様な物はないかと周囲を見回すと、僕のすぐ近くに鞄が2つあるのが見えた。 「そうか、ユイコの鞄……!」 あの中には何か無いだろうか? そう考えて、僕は男の様子を伺いながらそろそろと鞄を引き寄せ、そのうちの1つを開いた。 「こっちは僕のか」 見覚えのある黒い物体を確認して、僕は急いでもう一方の鞄を手に持つ。 そして男が隠れている事を確認してから勢いよく立ち上がる。 「ユイコ! 受け取って!」 僕は大声で叫びながら、ユイコに向かって鞄を投げた。 ――同時に乾いた音が2回、聖堂内に響く。 「え?」 脇腹に衝撃。僕の投げた鞄が妙にゆっくり飛んでいるのが見える。 視界の端で女の子がこちらに銃口を向けているのを捕らえ、頭の中が疑問で埋め尽くされる。 もう一度、今度は腹部に衝撃を感じ、疑問を解決する間もなく僕の意識は闇へと落ちた。 ◇◇◆◇◇ 「ユイコ! 受け取って!」 聖堂内いっぱいに響く大声に、俺は隠れていた柱から顔を出した。 見ると、並んだ座席の一番奥で伏せていた男が立ち上がっている。 巫女服姿のその外人は手に持った鞄を、前方にいる女に向かって思いっきり投げ…… そして、その横っ面をもう一人の女に銃撃された。 この三人は仲間ではなかったのかと一瞬戸惑うが、すぐに関係ないと思い直す。 そうだ、関係ない。渚がここに居なかった以上、どうせ全員殺すんだ。 隠れていた柱から飛び出し男に銃口を向けながら、俺は次の柱へと駆ける。 手前側の女は銃声に気を取られ、奥の女は外国人へ銃撃した直後で隙だらけだ。問題ない。 素人が連射しても当たらない事は、さっきの戦闘でよく理解できている。 右肩に怪我をしている現状ではなおさらだ。 だからこそあえて距離を詰め、1発を確実に当てて確実に殺す。 左手をまっすぐに伸ばし1発。狙うのは的の大部分を占める胴。 腹部に弾丸を受けて、男は驚愕の表情を浮かべて崩れ落ちた。 「クリス君!」 手前側の女の叫び声を聞きながら柱の影へ駆け込む。 遅れて奥から飛んできた1発の弾丸は俺に当たる事なく障害物で弾けた。 まずは1人。残る敵は2人。残る弾は4発。まずまずだ。 敵の様子を伺おうと柱から顔を出すと、奥から再び弾丸が1発飛んでくる。 首を引っ込めてそれをやり過ごし、今度は手前側の女の様子を確認した。 と、柱の影から出てきた黒く武骨な物体を目にして、俺は慌てて頭を隠す。 続けて響く轟音。俺の近くにある長椅子の背もたれが音をたてて砕ける。 更に奥からの銃弾が俺の隠れる柱と女の隠れる柱を削った。 状況は持久戦に移り変わっていた。 何らかの要因が加わらない限り戦況は変わらないだろう。 すなわちそれは、片手しか使えない自分には不利だという事だ。 こちらが弾を込めている間に2人で潰しあってくれるのならいい。 けれど、2人掛かりでこちらを潰しに掛かられたら、完全に詰む。 さて、どうする? 思案する俺の耳についさっき聞いたばかりの音が届けられる。 それは、扉の軋む音。戦況を変える要因が現れるという知らせだ。 扉の方へ視線を移すのと同時、白く煌く刃が俺へと向けて迫っていた。 ◇◇◆◇◇ 突然響いた扉の開く音に、弾込めをしていた私はそっと柱から顔を出す。 闇の中から飛び込んできたのは、日本刀を手にした黒衣の女。 そいつは入り口近くの柱に隠れていた男へと、一直線に駆け寄り斬りつける。 鋭いその一撃を男は何とか銃身で受け止め、鍔迫り合いに持ち込んでいた。 そして、私と同じくそれを確認したブレザー姿の女が、こちらに向かい銃を撃つ。 壁に穴が開けられる音を聞きながら応戦。私の撃った弾丸が女の隠れる柱に突き刺さった。 更に入り口側へと銃口を移す。 何かに驚いたように飛び退く女と、それに向けて銃を撃つ男。 私は2人に狙いを定めながら引き金を引こうとして――後方から飛んできた物体に邪魔をされた。 「――ッ!」 それが頭に当たった衝撃と驚きに、私は思わず手にした銃を取り落としそうになる。 ――ありえない。 そんな馬鹿な。 困惑と共に私は振り返る。 視線の先では険しい表情をした男が起き上がってこちらを睨みつけていた。 「……クリス、ヴェルティン!」 ◇◇◆◇◇ 教会に男が入っていくのを見送った後。 タイミングを見計らっていた烏月は、銃声と共に中へと飛び込んだ。 中にあったのは3人の人影。ひとまず入り口近くにいた男に斬りかかる。 振り返り様に銃身で受け止められるが烏月はその体勢のまま両腕に力を込めた。 右手で添えるように支えていたものの、ほぼ左腕一本で刀を受け止めていた男は苦痛の呻き声を上げる。 そのまま力を込めて押し切ろうとする烏月の視界の端で何か白い物が動く。 慌ててその場から跳び退ると同時に、目の前の男は物陰へと隠れながら銃を撃った。 それを左に跳ぶ事で避けて、続けて烏月は銃を手に駆け寄ってきていた黒髪の少女に斬りかかる。 少女は縦に振り下ろされた煌きを、身体の軸をずらす事で回避した。 「何故、こうも積極的な人間ばかりがここに現れるんだ?」 少しげんなりした表情で呟く少女。 烏月は切り上げ、横払い、縦払いと連続して斬りつける。 だが、それらは全て紙一重で回避され、更に少女はその体勢から高速の回し蹴りを放った。 その攻撃を上半身を無理に反らす事で避ける、流れるように捻り気味に落とされた踵は後ろに下がる事で回避。 続けてブレザー姿の少女はそのまま身体を一回転させる。 そして、後方へと向けて手にしていた鞄を投げながら叫んだ。 「クリス君!」 ◇◇◆◇◇ 「……クリス、ヴェルティン!」 困惑の表情を浮かべながら、女の子はそう叫んだ。 その表情の理由はわかっている。 どうして撃たれたはずの僕が生きているのか。 それは僕が着ている物――もちろんミコフクではなく、その下に身に付けた防弾チョッキのおかげだ。 元々ユイコの支給品だったそれを無理矢理着せられていたおかげで、こうして僕は命を取り留めている。 「どうして、僕の名前を知ってるの?」 そして、困惑の表情を浮かべているのは僕もまた同じだった。 僕の名前はともかく、どうして彼女は僕の苗字まで知っているんだろう? 「もしかして、僕の知り合いと会ったの?」 僕の発した言葉に、彼女は口の端を歪める事で答える。 ……どうやら、疑問に答えるつもりはないらしい。 もし、目の前の少女がトルタやファルさん、リセに出会っていたとして。 僕の名前を聞いた後、彼女はいったい何をしたんだろう? 今、ここでしているような、行動を取ったんだろうか? 「クリス君!」 ユイコの叫び声に我に返る。 それと同時に目の前の少女の持つ銃から銃声が響いた。 けれども、僕と少女の間に入った黒い物体――ユイコの鞄がその弾を防ぐ。 僕は慌ててその場に伏せながら、床に落ちたそれを拾い上げた。 再び響く銃声の中、何か身を守れる物はないかと鞄を開けて中身を探る。 と、不意に手に触れた物に、僕は背筋に痺れのような何かを感じた。 あえて言うならばフォルテールに似た、それでいて比べ物にもならないほどの不可思議な気配。 僕はそれらを手に、何故か脳裏に浮かんだ“彼女達”の名前を叫んだ。 「ロイガー! ツァール!」 言葉と共に鞄から取り出した2振りの短剣を展開、組み合わせる。 そうして八枚の刃を持つ形になったそれを手に僕は立ち上がり、目の前の少女に向かって投げつけた。 高速で横回転しながら飛ぶそれを、彼女は余裕の表情で回避する。 しかし、少女が完全に回避する直前にその風車は彼女を追うように軌道をずらし、その腕を深く切り裂いた。 苦悶の表情を浮かべながら少女が銃を取り落とす。 戻ってきた風車を手に僕は彼女へと距離を詰める。 しかし、女の子は手早く足元の銃と鞄、そして近くにあった四角い物体を手に取ると、近くにあった窓へと飛び込んだ。 けたたましい音をたててガラスが派手に飛び散る。 その行動に驚いたものの続けて外から聞こえた足音に、僕はようやく彼女に逃げられたのだと気付いた。 素早く思考を切り替えて、そのままユイコが戦っている方へと振りかえる。 そしてその場所へ駆け寄りながら、僕は再びブーメランを投げつけた。 ◇◇◆◇◇ 綺麗な列を作って並ぶ長椅子の影で、俺はしゃがみ込みながら目の前で行われている闘いを見つめている。 一息の間に無数に繰り出される斬撃と、それを紙一重で回避しながら放たれる蹴りと拳。 そのコンビネーションを回避しながら再び繰り出される斬撃の嵐。 まるでそれはカンフー映画のアクションシーンか、はたまた時代劇の殺陣かと思うほどの代物だった。 そんな達人同士の試合を目を凝らしながら、俺は確実に当てて確実に殺すために2人の隙を探す。 最初は2人が争っている横から撃ち殺そうと考えていたのだが、思った以上に2人の動きは速かった。 そして、ついさっきの鍔迫り合いで再び右肩から流れ出始めた血が、動き続ける的を狙うのを困難にさせている。 残った弾は後3発、もう無駄にはしたくない。 「ロイガー! ツァール!」 さっき殺し損ねた男が何かを叫び、その後1分もしないうちにガラスの割れる音が響いたが、 2人は特に反応を見せず一心不乱に闘い続けていた。 俺もあえてそれを無視して闘いを観察し続ける。 と、不意に風を裂く様な音と共に何かが飛来した。 高速で回転するそれは刀を持った女を狙うように襲い掛かる。 まるで背後に眼があるかのように女は飛び退り、それと対称を描くようにもう一人の女も反対側に飛び退る。 ――今だ! 女が着地した瞬間に起き上がり銃撃。 襲い掛かる弾丸を身体を反らす事で無理矢理回避したようだが気にしない。 続けて俺は場所を移しながら、銃口を刀を持った女に向けて撃つ。 連続して襲い掛かる物体を回避していた女は銃声に反応し回避するが、続けて飛来した物体に足を切り裂かれ顔を歪めた。 そのまま駆けて柱の影へ。 顔を出して様子を伺うと、日本刀を持った女がドアから外へと逃げ去るところだった。 もう一人の女は近くにあった柱の影にでも隠れたらしい。 そして、奥に居たはずの女はすでに姿を消していた。 残る弾は1発、残る敵はおそらく2人。 そろそろ潮時かもしれないなどと考えている時だった。 窓の外から緑色の閃光が差し込み、爆発音共に巨大な衝撃が聖堂全体を揺らしたのは。 ◇◇◆◇◇ 少し離れた位置で爆発をあげる大聖堂を、千羽烏月は黒く大きな物体を両腕で抱えたまま見つめていた。 地面に並行になるよう支えられたそれは、烏月に支給されたもう1つの支給品。 持ち主の魔力を破壊の力へと変える巨大な砲門だった。 魔力の代わりに烏月の霊力を糧として、武骨な砲台は破壊のエネルギーを生産する。 先端を大聖堂へと向けたまま、烏月は再び力を解放するための呪を唱えた。 「――我、埋葬にあたわず(Dig me no grave)」 ◇◇◆◇◇ 「これはまずいな」 ユイコの小さな呟きを耳にしながら、僕は慌てて周囲を見回していた。 突然響いた爆発音と大きな振動。 長椅子やオルガンは引っくり返り、壁にいたっては大穴が開いている。 これは明らかに敵の攻撃だった。 「さて、三十六計逃げるにしかずだ。脱出するぞ、クリス君」 その言葉に頷きながら、僕は教会ならかならずあるはず物を探す。そして…… 「あった! こっちだ、ユイコ!」 僕はそう叫びながら彼女の手を取ると、目的の物に向かって走り出した。 ◇◇◆◇◇ 大聖堂が半壊したのを確認した後。 千羽烏月は無言で巨大砲門を鞄に詰めていた。 代わりに取り出されたのは名刀・地獄蝶々。 剣士である自分にはやはり刀が性に合う。 (けれど桂さんのためならば……私はどんな手でも使うと決めたんだ) そう、砲撃手の真似事などという慣れない行動を取ったのも全ては桂を救うため。 (しかし、やはり消耗が激しいね) 刀を手に歩き出そうとすると、少し脚がふらついた。 本来は魔力を使用すべき所を無理矢理霊力を使って撃ったせいか、 それともこれもまたあの男達の言う制限という物なのか…… ともかく、あの巨大砲は連続して使うには燃費が悪すぎる。 (応急処置と……後は少し休息できそうな場所を探すとするか) ふらつく脚を叱咤しながら、少女は闇の中へと走り去った。 【E-3 大聖堂付近/一日目 黎明】 【千羽烏月@アカイイト】 【装備:地獄蝶々@つよきす -Mighty Heart-】 【所持品:支給品一式、我 埋葬にあたわず@機神咆哮デモンベイン】 【状態:中程度の肉体的疲労、中程度の精神疲労、身体の節々に打撲跡、右足に浅い切り傷】 【思考・行動】 基本方針:羽藤桂を生還させる為、他の参加者達を皆殺しにする 0:まずは応急処置と休息 1:桂以外を全員殺して、最後に自分も自害する 2:桂を発見したら保護する 【備考】 ※烏月は桂言葉の名前を知りません(外見的特徴のみ認識) ※自分の身体能力が弱まっている事に気付いています ※烏月の登場時期は、烏月ルートのTrue end以降です ※岡崎朋也、クリス・ヴェルティン、椰子なごみ、来ヶ谷唯湖の外見的特長のみを認識しています ◇◇◆◇◇ 「ここまで来れば、大丈夫かな?」 大きく息を吐きながら僕が言うと、ユイコは無言で頷いて見せる。 僕の知る、殆どの教会にあるもの――それは神父様達が普段寝起きし生活している空間。 その場所から裏口を抜けて脱出した僕等は、そのまま裏庭らしき場所を抜けて雨の振る中を全力で逃げ出していた。 「さすがにここまでは追ってこないと思いたいけど」 そう言いながら、汗と雨で濡れた額をミコフクの袖で軽く拭う。 「それにしてもユイコって物凄く強かったんだね……?」 おかしい。 何故ユイコは一言も喋らないんだろう。 僕は疑問に思いながらユイコを見た。 そこには相変わらず無言でその場に立つユイコ……その脇腹が赤く染まっている事に、僕は始めて気がつく。 「ユ、ユイコ! その怪我!」 「ん……ああ、たいした事はない。少し、掠っただけだ」 僕の驚きの声にユイコは笑顔を浮かべながら答える。 だけどその顔は雨で濡れている事を差し引いても、すごく青白くなってる気がした。 「掠ったって……まさか、僕のせいで?」 降りしきる雨が、一段と強くなった気がした。 そうだ。この傷は多分、僕が投げた風車を避けようとして撃たれた時にできた物だ。 もし僕があのブーメランを投げなかったら、ユイコは怪我をしなかっただろう。 いやそれ以前に、僕が今着けている防弾チョッキをユイコが着ていたら…… 「……いや、君のせいなんかじゃない。それに本当にかすり傷なんだ。だから大丈夫」 「大丈夫、じゃないよ! 急いで病院に行かないと!」 とりあえず、僕のワイシャツを鞄から取り出して引き裂き、それを傷口に当てて押さえさせる。 「だが、この状況では医者など1人もいないと思うんだが……」 「それでも! ここでこのままこうしてるよりはマシだよ!」 そう言いながら、僕は彼女に背を向けてしゃがむ。 「さあ、病院まで連れてくからおぶさって!」 「なっ……!」 僕の言葉にユイコは驚いたような声をあげ、そしてそのまま黙り込んでいる。 「速く!」 「あ、ああ」 困惑の交じったような声をあげて、ユイコは僕の背中におずおずと身体を預ける。 と、そこまで行ったところで、不意にこれは物凄く恥ずかしい格好なんじゃないかという気がしてきた。 いや、これは人命救助なんだから、恥ずかしい事なんて何もない……はずだ。 「それじゃあ、行くよ」 背中のユイコに断りを入れて、僕は走り出す。 目指すは病院。例え医者がいなくても、彼女を治療するために僕はそこへと向かう。 「ああ、クリス君。ちなみに病院は北だ」 ユイコの言葉に僕は顔を赤くして方向を転換した。 【D-3 森林/1日目 黎明】 【クリス・ヴェルティン@シンフォニック=レイン】 【装備】:刀子の巫女服@あやかしびと -幻妖異聞録-、防弾チョッキ 【所持品】:支給品一式、ピオーヴァ音楽学院の制服(ワイシャツ以外)@シンフォニック=レイン ロイガー&ツァール@機神咆哮デモンベイン 【状態】:中程度の肉体疲労、軽度の精神疲労、巫女服 【思考・行動】 基本:無気力。能動的に行動しない。 0:Piovaゲージ:70% 1:ユイコを病院に連れて行く 2:ユイコは不思議な人だ 3:あの部屋に帰れるのだろうか 4:トルタ・ファル・リセは無事なんだろうか 5:あの少女(なごみ)が誰と会ったのか気になる 6:それでも他人とはあまり関わらない方がいいのかもしれない 【備考】 ※雨など降っていません ※Piovaゲージ=鬱ゲージと読み替えてください ※増えるとクリスの体感する雨がひどくなります ※西洋風の街をピオーヴァに酷似していると思ってます ※巫女服が女性用の服だと気付いていません ※巫女服の腹部分に穴が開いています ※千羽烏月、岡崎朋也、椰子なごみの外見的特長のみを認識しています ※なごみがトルタ・ファル・リセのいずれかに何かしたのかもしれないと不安に思っています 【来ヶ谷唯湖@リトルバスターズ!】 【装備】:デザートイーグル50AE(6/7)@Phantom -PHANTOM OF INFERNO- 【所持品】:支給品一式、デザートイーグル50AEの予備マガジン×4 【状態】:中程度の肉体疲労、脇腹に浅い傷(ワイシャツで止血中)、凄く恥ずかしい 【思考・行動】 基本:殺し合いに乗る気は皆無。面白いもの、興味惹かれるのを優先 0:恥ずかしい 1:クリスの言うとおり病院へ 2:クリスは面白い子だ、ついでに保護 3:いつかパイプオルガンを完璧にひいてみたい 4:リトルバスターズのメンバーも一応探す 【備考】 ※クリスはなにか精神錯覚、幻覚をみてると判断。今の所危険性はないと見てます ※千羽烏月、岡崎朋也、椰子なごみの外見的特長のみを認識しています ◇◇◆◇◇ 「くそっ!」 壁に入った亀裂から飛び出した俺は、近くの民家の影に駆け込んでいた。 いくらなんでも、建物を問答無用で破壊できるようなレベルの武器まで支給されてるとは…… そして、眼前で起こっていたあの闘い。 あんな武術の達人のような人間が他にもたくさんいるんだろうか? そして、俺はそんな奴等に勝てるのだろうか? 勝ち目があるんだろうか? 「それでも、俺は……渚……」 そうだ、俺は渚の為に敵を排除しなければ、殺さなければならないんだ。 待ってろ渚。今すぐ俺が迎えに…… 「――ガッ!」 衝撃。 皮膚の焦げるような臭いと一緒に、身体全体に衝撃が走る。 足から力が抜け仰向けに引っくり返った俺を髪の長い女が覗き込む。 その女は口の端を醜く歪ませながら、俺の頭に銃口を向けて…… 「なぎ……さ……すまな……」 乾いた音を最後に、俺の意識は永久に失われた。 【岡崎朋也@CLANNAD 死亡 】 ◇◇◆◇◇ 教会で襲撃してきた男をスタンガンと銃を使って殺し、私は急いで男の持っていた銃と鞄を回収した。 鞄の中に入っていたのは拳銃の弾丸とだんごが9本。 そのうち、食料と弾丸のみを私の鞄に詰めなおし…… だんご9本とついでに私の鞄に入っていた辞書をその場に投げ捨てる。 辞書とだんごが赤く染まっていくのを横目に見ながら、私は移動を開始した。 思った以上に時間を取られてしまった。 それもこれも、みんなあの男――クリス・ヴェルティンのせいだ。 右腕の傷が疼く。 スカートを千切って縛ったそこはすでに血を止めていたけれど、それでも痛みは消えない。 次に会ったら必ず殺す。 あの男もリセルシアも絶対に殺してやる。 私は自分の内に溢れる苛立ちを押さえ込みながら、夜の街へと駆け出していった。 【E-3 東部/1日目 黎明】 【椰子なごみ@つよきす -Mighty Heart-】 【装備:S W M37 エアーウェイト(0/5)、スタンガン】 【所持品:支給品一式、S W M37 エアーウェイトの予備弾30 コルト・パイソン(1/6)、357マグナム弾24】 【状態:右腕に深い切り傷(応急処置済み)、全身に細かい傷】 【思考・行動】 基本方針:レオを優勝させる 1:レオと合流することが最優先 2:殺せる相手は生徒会メンバーであろうと排除する 3:クリスとリセは次に会ったら絶対に殺す 4:赤毛の男(士郎)とブレザー姿の女(唯湖)、日本刀を持った女(烏月)も殺す 【備考】 ※なごみルートからの参戦です ※大聖堂が半壊し、爆発音が周囲に響きました ※大聖堂内に蒼い鳥@THE iDOLM@STER』の楽譜が放置されています ※杏の辞書@CLANNADとだんご9本(家族だんご)@CLANNADがすぐ朋也の死体の側に放置されています 【刀子の巫女服@あやかしびと -幻妖異聞録-】 刀子のつけていた巫女服。もちろん、女性用。 【デザートイーグル50AE@Phantom -PHANTOM OF INFERNO-】 ツヴァイ愛用の自動拳銃。いわゆるハンドキャノン。 【ロイガー&ツァール@機神咆哮デモンベイン】 アルのページの断片、二対の短剣。 展開して組み合わせると大きな手裏剣のような形になる。 また、ある程度は敵を追尾する。 【我、埋葬にあたわず@機神咆哮デモンベイン】 エルザの持つ兵器の一つ。ドクターウェスト作。 使用者の魔力を糧にビームを発射する。 039 死を超えた鬼と少女 投下順 041 GET TO BURNING 時系列順 003 そして始まる物語 千羽烏月 057 First Battle(前編) 033 Fearing heart 岡崎朋也 013 I am bone of my sword 椰子なごみ 067 ふたりはヤンデレ 024 偽りの空の下で狂人は変人に魅入られ、そして始まるたった2人だけの演奏会。 クリス・ヴェルティン 070 リセエンヌ(前編) 来ヶ谷唯湖